ナレーションの美輪明宏が分析 「花子とアン」高視聴率の理由

[ 2014年9月29日 12:45 ]

「花子とアン」でナレーションを担当した美輪明宏

 NHK朝の連続テレビ小説「花子とアン」が27日、最終回を迎えた。毎回、「ごきげんよう」のナレーションで話題になった美輪明宏(79)が、なぜこれだけ大ヒットしたのか、その秘密を明かした。

 「あらゆる面で視聴者のみなさんのニーズにマッチしたということでしょうね。以前、経営の神様と言われた松下幸之助さん(パナソニック創業者)とお目にかかった時、“お客さんはうちの商品を待っています。ですから、出せば必ず売れます”と話していたことを思い出しました」

 実はNHKからナレーションの依頼があり、脚本を読んだ瞬間に、美輪は「このドラマはきっとウケる」とヒットを確信したという。その理由は、テレビ朝日「ドクターX」なども手がける中園ミホさんの脚本の面白さだ。「毎回毎回、明日はどうなるのかしらとついついチャンネルをあわせてしまう仕掛けがありました。これなら観ている人たちを飽きさせることはないだろうなと思いましたね」。

 ドラマは大正、昭和の激動の時代を明るく生き抜いた花子(吉高由里子)の半生に、葉山蓮子(仲間由紀恵)ら個性豊かな登場人物を巧みに絡ませ、それぞれの生き様を鮮明に描き出した。「涙、笑い、恋愛」の物語には欠かせない要素はもちろん、随所に意外な展開を張りめぐらせ、老若男女が楽しめる娯楽作品に仕上がっていた。封建的な男と思われた蓮子の二度目の夫、炭鉱王の嘉納伝助(吉田鋼太郎)が本当は愛情豊かな腹の太い好人物だったこと、女学校で“はなの天敵”だった白鳥かをる子(近藤春菜)が同じ山梨出身で最後は「はなは山梨の誇り」と明かすなど、心温まるエピソードも盛り込まれた。

 出演者にイケメンが多かったことも高視聴率につながったという。強い男の嘉納伝助、蓮子と駆け落ちする、少し屈折した宮本龍一(中島歩)、嘉納家に出入りする誠実な新聞記者の黒沢一史(木村彰吾)、はなの幼なじみの木場朝市(窪田正孝)ら、タイプやキャラの異なる俳優陣を配したことで、女性ファンを釘付けにしたのも勝因のひとつだ。

 本格的な美術や大道具、小道具なども茶の間の興味を引いた。特に当時の着物は、大正ロマンを象徴するアールデコ調の銘仙、蓮子が身につけていた高級織物の緞子(どんす)、綸子(りんず)など、女優陣の衣装に目を向けた視聴者も少なくないはずだ。「今見てもあの頃の着物はとてもおしゃれで洗練されたデザインですからね。特に女性は見ているだけでも楽しかったのでは」と美輪。セット中のさりげなく置いてあるティファニーランプなども可能な限り本物を用いて重厚感を出したことが、高級志向の現代人の感覚にマッチしたのかも。

 最後に美輪が最も驚いたのは、蓮子と宮本が駆け落ちする場面の脚本には、ひとことのセリフもなく、美輪が歌う「愛の讃歌」の日本語の歌詞だけが書かれていたことだ。「私が40年以上も前にエディット・ピアフの詞を訳したものですよ」。その狙いも見事に的中、放送後には「今年の紅白はこれで決まり!」などとツイッター上で大騒ぎとなった。

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2014年9月29日のニュース