お千代さん 最後の“新曲発表会”死去3日前の歌声響く

[ 2013年11月15日 05:30 ]

島倉千代子さんの遺影に使った写真で着ている着物の襟合わせをイメージして造られた祭壇。99年に受章した紫綬褒章の賞状も飾られた

 今月8日に肝臓がんのため75歳で死去した歌手の島倉千代子(しまくら・ちよこ)さんの葬儀・告別式が14日、東京・青山葬儀所で営まれた。斎場では亡くなる3日前に自宅で吹き込んだ新曲「からたちの小径(こみち)」が流され、魂を振り絞るかのような歌声に多くの参列者が涙した。また「人生の最後に歌を入れられるって、こんな幸せはありません」と息も絶え絶え語った“最後の肉声”も流された。

 静まり返る斎場に響いた島倉さん最後の歌声。遺作となった「からたちの小径」を、参列者は目を潤ませながら聴き入った。

 か細く、透き通るような歌声。息が思うように続かなくとも“泣き節”と呼ばれた哀感は健在で、少女のようなかれんさは最期まで消えなかった。参列した細川たかし(63)は「死ぬ何日か前に、人間はあれだけ歌えるものなのか」と驚いていた。

 来年の歌手生活60周年に向け、南こうせつ(64)に自ら提供を願い出た一曲。15日に録音する予定だったが、島倉さんは「そこまで待てない」と直訴。急きょ5日に自宅に機材を運び入れて録音。魂を振り絞るかのように3回も歌ったという。

 斎場では“最後の肉声”も流された。録音の翌日に入院した島倉さんが、病床からこうせつに入れたお礼の電話だ。

 「私の部屋の中にスタジオができて、それで私はできる限りの声で歌いました。自分の人生の最後に、もう二度と見られないこの風景を見せていただきながら、歌を入れられるって、こんな幸せはありませんでした。人生の最後に、素晴らしい、素晴らしい時間を、ありがとうございました」

 歌声とは一転して、消え入りそうな声。苦しそうな息遣いからは、身命を賭した“最後のレコーディング”だったことがうかがえた。言葉を選ぶように語るそのメッセージには、歌うことができた喜びと、歌への愛がこめられていた。

 出棺時には、代表曲「人生いろいろ」が流された。大月みやこ(67)藤あや子(52)山田邦子(53)らが涙を流しながら口ずさみ、手拍子を打った。借金、乳がん、中絶など、その歌詞通りに「いろいろ」あった人生。最後は大きな拍手で見送られた。

 昭和を代表する歌手のお別れに、芸能関係者1000人、ファン2000人が参列。国会答弁で「人生いろいろ、会社もいろいろ」と言った小泉純一郎元首相からも弔電が届いた。棺には大好きな紫の着物が納められた。

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2013年11月15日のニュース