松本幸四郎 転落事故から一夜「傷一つない。奇跡」演出は変更

[ 2013年10月25日 06:00 ]

国立劇場での公演を終え、会見した松本幸四郎

 歌舞伎俳優の松本幸四郎(71)が公演中に、客席に転落してから一夜明けた24日、現場の国立劇場(東京都千代田区)で会見した。この日から、転落した花道は通らない演出に変更。「かすり傷一つない。痛みもない。奇跡ですね。普段だったら大ケガだったかも。ぞっとします」と話した。

 前日23日に「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)」で主人公・熊谷直実役を演じ、花道上で黒子2人が演じる馬から客席に転落。観客によると、約3メートル下の客席に落ちた直後は大汗をかき、息を切らしていた。場内が静まり返る中、黒子の手を借りて花道によじ登り、見えを切ると拍手が起きたという。病院には行かず、直接自宅に帰ったといい、この日の足取りは軽かった。

 花道は幅約1・5メートル、長さ約20メートル。よろいと幸四郎の体重を合わせた重さは約100キロで、転落すると客席にも危険が及ぶことになる。幸四郎と劇場側の話し合いで、花道から舞台へ向かう演出を、舞台下手から中央へ向かうように変えた。劇場関係者によると27日まで同様の演出で対応。幸四郎は「お客さんにケガがなくて良かったが、刀の柄(つか)が折れるほどの衝撃だった。ぞっとした。失敗したのに拍手を頂き申し訳なかった」と神妙な表情で振り返った。

 同劇場では昨年8月、長男の市川染五郎(40)が約3メートル下の奈落に落ちて大ケガを負った。染五郎は今回共演しており、幸四郎は「うまく芝居をつないでくれた。“オヤジ、してやったり”という顔をしてましたよ」と、自身のアクシデントをカバーした息子の演技に目を細めた。「息子もこうやって舞台を踏めている。皆さんの拍手とお心で奇跡を起こしていただいた」と観客にも感謝した。

 歌舞伎界では昨年12月に中村勘三郎さん、今年2月に市川団十郎さんら人気俳優が相次いで亡くなるなど、悲報が続いている。幸四郎は「頑張らなくてはと思った。そういう気持ちをつないでいきたい」と力を込めた。

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2013年10月25日のニュース