藤圭子さん飛び降り自殺 数年前「話す人いなくて寂しい」

[ 2013年8月23日 06:00 ]

1979年12月26日、引退「サヨナラ公演」での藤圭子さん

 歌手宇多田ヒカル(30)の母親で、「圭子の夢は夜ひらく」などのヒット曲で知られる歌手の藤圭子さん(62)が22日午前、東京都新宿区のマンション前の路上で血を流して倒れているのが見つかった。心肺停止状態で病院に搬送されたが、間もなく死亡が確認された。28階建てマンションの13階から転落したとみられ、警視庁新宿署は現場の状況などから、飛び降り自殺を図ったとみて調べている。

 新宿署によると、22日午前7時ごろ、新宿区西新宿の28階建てマンション前の路上で、黒っぽいTシャツ、ハーフパンツ姿の藤さんが仰向けに倒れ、後頭部から血を流しているのを通行人の男性が発見し、110番。近くにはスリッパの片方が落ちていた。藤さんは頭を強く打っており、搬送先の病院で死亡が確認された。07年に離婚した音楽プロデューサーで、宇多田の父、照實氏が身元を確認した。

 同署は、藤さんが飛び降りたとみられる13階の30代の知人男性宅を実況見分し、転落時の状況を確認。2LDKの部屋のベランダに、足場にしたとみられるクーラーボックスとともに、スリッパの片方が残されていた。

 衣服の乱れや争ったような跡はなく、同署は事件性はないと判断。遺体からアルコールなども検出されなかった。知人男性は「6年くらい前から一緒に住んでいる。別の部屋で寝ていて転落に気付かなかった」と話しているという。男性と内縁関係はなく、遺書は見つかっていない。

 藤さんは1969年に「新宿の女」で歌手デビューし、70年に「圭子の夢は夜ひらく」が大ヒット。71年に歌手の前川清(65)と結婚するが翌72年に離婚。79年に引退表明して渡米し、その後、照實氏と再婚して83年には娘の宇多田を出産。96年には宇多田と一緒に曲を発表したが、近年は表舞台から遠ざかっていた。

 一体、藤さんに何があったのか。親しかったスポニチ本紙記者に「どうしても会いたい。相談したいことがある」と数年前、電話を入れていた。会ったのは亡くなった場所と同じ西新宿。「久しぶりに日本に帰ってきたけど、話す人がいない。寂しい。昔の知り合いに連絡を取ってみたいけど、電話番号もどこにいるのかも分からない」と、孤独感に襲われていることを吐露。手塩にかけてきた宇多田についても「このままではダメ」と厳しく言った上で「彼女は天才。私よりずっとずっと凄いんです。私がいたらもっとあの子のいいところを引き出せるのに」とアイデアを次々と語っていた。ただ、照實氏と宇多田とは10年近く疎遠になっていて、「もうずっと会っていない」と明かしていた。

 家族との愛憎は現役時代からで、金銭トラブルで母親とは絶縁。音楽界の生みの親で、3月に亡くなったプロデューサーの石坂まさをさんのことも憎んでいた。

 かつて藤さんは本紙記者に「感情を抑えることができない。パニック障害と診断された」と明かしていた。あまりにも研ぎ澄まされた感性が周囲とのあつれきを生み、孤独になっていった。時代の徒花(あだばな)とも言われた天才歌手ゆえの悲劇かもしれない。

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