人間国宝の狂言師 茂山千作さん死去、93歳

[ 2013年5月23日 06:58 ]

2010年12月、弟の茂山千之丞さんをしのぶ市民狂言会で「福の神」を演じる茂山千作さん

 狂言界で初めて文化勲章を受けた大蔵流狂言師で人間国宝の茂山千作(しげやま・せんさく、本名七五三=しめ)さんが23日午前0時15分、肺がんのため京都市の自宅で死去、93歳。京都市出身。告別式は5月27日午後1時から京都市左京区黒谷町121、金戒光明寺で。喪主は長男千五郎(せんごろう、本名正義=まさよし)氏。

 三世茂山千作の長男として生まれ、1924年に初舞台。66年に当主の名前である十二世千五郎を襲名した。登場するだけで観客を幸せな気分にする独特の存在感や、おおらかな芸風と人柄で親しまれた。京都を拠点に、大老井伊直弼のお抱えに由来する茂山千五郎家の芸を継承、発展させた。

 弟の故茂山千之丞さんと共に、古典狂言の復活と新作狂言の両方に積極的に取り組んだ。他流の狂言師や新劇俳優との共演、歌舞伎やテレビドラマへの出演など、幅広い活動は、それまであった能楽界のタブーを破った。全国各地での「学校公演」を長年続け、多くの狂言ファンを育んだ。

 ポピュラーな「素袍落」「末広かり」から、大曲の「靱猿」「木六駄」まで、代表作多数。89年には人間国宝に。91年に日本芸術院会員となり、94年に隠居名の四世「千作」を襲名。晩年まで旺盛に舞台をつとめ、2007年に文化勲章を受けた。

 長男の十三世千五郎さんら3人の息子や、正邦さんら4人の孫、千之丞さんの子や孫も狂言師として活躍。一族で茂山狂言祭などを定期的に開いていた。著書に「千五郎狂言咄」がある。

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