北島「チョー気持ちいい」引き出した NHK石川アナ死去

[ 2013年1月8日 06:00 ]

亡くなった石川洋アナ

 08年の北京五輪で北島康介(30)が金メダルを獲得した競泳男子などを実況したNHKの石川洋(いしかわ・ひろし)アナウンサーが6日午後3時47分、都内の病院で死去した。53歳。川崎市出身。同局が7日、発表した。04年のアテネ五輪では、インタビュアーとして北島から「チョー気持ちいい」の名言を引き出した。

 NHK関係者によると、石川さんは数年前から入退院を繰り返していた。体調が良好なときには東京・渋谷の同局に出勤。昨年11月にはラジオでニュースを担当した。12月初旬に体調を崩して再入院。遺族の意向で死因は明らかにされていない。11月にアナウンス室で石川さんを見かけた関係者は「“酒でも飲むか”と声を掛けたら、元気そうに笑っていたのに。早すぎる」と惜しんだ。

 石川さんは、スポーツ史に残る名場面を実況してきた。アテネ五輪では、競泳男子100メートル平泳ぎで自身初の金メダルを獲得した北島に、レース直後のプールサイドでインタビュー。同年の新語流行語大賞にも選ばれた「チョー気持ちいい!」の名言を引き出した。200メートル決勝では実況を担当、連続金メダルの興奮を茶の間に伝えた。

 4年後の北京五輪では北島の100、200メートル両方の決勝を実況。金メダルとなった両レースとも、ゴール直前は絶叫気味。関係者は「冷静に事実を伝えるタイプの石川さんにしては珍しかった。2大会連続の2種目制覇でさすがに興奮していたのでしょう」と話した。五輪には夏冬合わせ9大会に関わった。

 夏の全国高校野球大会でも実況を担当。98年の第80回大会では準々決勝を務めた。松坂大輔を擁した横浜とPL学園の延長17回、3時間37分の死闘を一人で中継。終了後、横浜ナインが号泣し、PLナインに晴れやかな笑顔が見られたことから、「勝って泣く顔があります。負けて笑う顔があります」と伝え、高校野球ファンの間でも“名言”として語り継がれている。

 ラグビー中継もライフワークと公言していた。最後のスポーツ実況は昨年1月8日の大学選手権決勝で、帝京大が3連覇した一戦だった。NHK関係者は人柄について「偉ぶるところがなく、後輩からも慕われていた。指導者としても期待していたのだが…」と説明。病床では、野球の実況で復帰したいと、春のプロ野球開幕を楽しみにしていたという。葬儀・告別式は近親者のみで行う。喪主は妻秀子(ひでこ)さん。

 ◆石川 洋(いしかわ・ひろし)1959年(昭34)7月24日、川崎市生まれ。83年入局。初任地は長野放送局。神戸、広島、大阪放送局を経て東京アナウンス室へ。93、94年に「NHKニュースおはよう日本」でスポーツキャスターを担当。プロ野球中継を通し、明治大の先輩でもある星野仙一氏と親交がある。

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2013年1月8日のニュース