故若松監督弟子が監督デビュー 遺志継ぎ「思い訴え戦っていく」

[ 2012年11月28日 06:00 ]

若松孝二監督の遺志を継ぎ、映画監督デビューする白石和彌監督

 10月に急死した映画監督の若松孝二さん(享年76)の弟子が監督デビューする。数々の若松作品で助監督を務めてきた白石和彌監督(37)。実際の殺人事件をめぐる衝撃の展開を題材にした「凶悪」(来年秋公開予定)でメガホンを取り、社会派として名をはせた若松さんの遺志を継ぐ。

 白石監督が若松組に初参加したのは96年の「標的 羊たちの哀しみ」。中村幻児監督が主宰する「映像塾」に所属していたところ、特別講師を務めた若松監督にその才能を見込まれて助監督に抜てきされた。以降、05年まで5作の助監督を務め、実際に起きた事件を題材にする若松監督の下で映画作りを学んだ。

 本格長編作品の監督デビューにあたり「師である若松孝二監督は常々“映画を武器にして戦う”と言っていました。私も師の遺志を受け継ぎ、自分の思いを映画にして訴え、戦っていければと思っています」と決意を新たにしている。

 作品はノンフィクション「凶悪 ある死刑囚の告発」(新潮45編集部)が原作。死刑判決を受けた元暴力団組長が週刊誌の記者に、警察も把握していない3件の殺人事件に関与したことを告白。その真相に迫ろうと奔走した記者らの取材過程を追ったドキュメントで、出版直後の07年、捜査当局が実際に動いて事件は展開を見せ、大きな話題になった。

 故人が精力的に監督した社会派ドラマでメガホンを取ることになった白石監督は「事件の根底には高齢者問題や長引く不況、家族の絆の喪失など、現代の社会が抱えるさまざまな問題が内在しています。社会と人間をしっかりと見つめながら真しに映画にしていきます」と抱負。若松プロの関係者も「“初心忘れるべからず”の精神でこの作品に挑んでもらいたい。そして、作品を作り続けることこそ、若松監督の遺志でしょう」とエールを送っている。

 来年春に完成予定。海外映画祭への出品を目指す。海外映画祭の常連だった恩師に続くか期待される。

 ◆白石 和彌(しらいし・かずや)1974年(昭49)12月17日、北海道生まれ。95年「映像塾」に参加。若松監督の下では「明日なき街角」「17歳の風景 少年は何を見たのか」などで助監督を務めた。行定勲監督らの作品にも参加。

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