新沼謙治 震災、夫人の死乗り越え新曲 総力戦で仕上がった喜びかみしめ

[ 2012年11月25日 06:33 ]

新沼謙治の新曲「雪の宿」

 岩手県大船渡市出身の新沼謙治(56)が、新曲「雪の宿」を、21日にリリースした。カップリングは東日本大震災で傷ついた故郷の再生を願ってつくった「ふるさとは今もかわらず」で、本人的には両A面的な気持ち。会心の出来上がりに、デビュー当初に可愛がってもらったグラフィックデザイナー・横尾忠則氏(76)に連絡を入れ、書き下ろしジャケットをお願いするほどの熱さを見せた。

 「去年はいいこと、一つもありませんでした」と振り返る新沼。むりもない。2011年は生涯忘れられない年になった。3月の東日本大震災で郷里を含む東北3県が壊滅的な被害。9月には25年間連れ添ってきた博江夫人に先立たれた。傷ついた故郷を度々訪れ、チャリティーコンサートも開催した。大きな悲しみの後、時間をかけて完成させたのが今回の2作品。十八番の雪シリーズ「雪の宿」と、母校の大船渡市立第一中学校の生徒らによるコーラスが入った復興を祈る歌「ふるさとは今もかわらず」だ。

 「ふるさと…」は自作曲で、久しぶりに故郷に帰ったときにメロディーが浮かんだという。「川のほとりをウォーキングしているときに♪さわやかな 朝もやの中を…って浮かび、輪唱が聴こえてきたんです。空気にも青くさい匂いがあって、あ、いいなって。オレは東京に出て行ったけど、こういうところで育った野生だったんだって」

 1番はスーッと出来たが、2番は苦戦。それでもムリにはめ込まず、浮かぶまで待ち、納得いった段階で友人に試聴。「いいね。やった方がいい」と背中を押されて前進。未来を象徴する若い世代の女声コーラスが合うと直感し、知り合いの長崎の音楽教師に輪唱用の楽譜を依頼。お手本用に杉並児童合唱団に歌ってもらううち、母校、長崎・岩屋中、合唱団の計44人による大コーラスでやることを決断した。ジャケットにもこだわろうと、デビュー当時から可愛がってもらったグラフィックデザイナーの第一人者・横尾氏に依頼した。

 実は、デビュー直後に縁があった。当時の雑誌「GORO」用にモデルになったのが縁。以来ご無沙汰だったが、思いきって連絡すると快諾。「バドミントンの世界チャンピオンだったうちの女房がよく言ってました。“スポーツは勝ち負けがはっきりしてるけど、お父さんの仕事は周りに力を集めないと”って。あぁ、やっぱり、自分の周りに才能が集まらないとだめなんだって」と、みんなの力、総力戦で仕上がった喜びをかみしめている。

 「雪の宿」は前作「雪の川」に続く作品。“七つの雪”を表現した「津軽恋女」に代表されるように、雪を歌うと売れるというイメージがある。今作は「おんな雪」と命名しようと思いながら、同名作品の多さから宿に落ち着いた。好対照の2曲の作品づくりは同時進行ながら混乱は一切なかったそうで、「歌ってるのは同じ人間だけど、光と影を楽しんで下さい。全く違う曲調だから面白いと思う」

 まだ、3グループそろっての合同コンサートの日程は出ていない。「まずは僕がそれぞれの場所に行ってやれたら」とあせりはない。長崎の中学生からもらった激励の色紙(3面)を宝物にして、行く先々の楽屋に飾って勇気をもらい、歌を着実に広めることを誓っている。

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2012年11月25日のニュース