未発表の「手塚漫画」発見 同級生が60年保管「デビュー直前に描いた可能性も」

[ 2012年11月2日 14:53 ]

手塚治虫さんの未発表作品。紙の裏表にペンで描かれている=埼玉県新座市の手塚プロダクション

 漫画家の手塚治虫さん(1928~89年)が終戦直後の10代後半に描いた未発表作品が、2日までに見つかった。手塚さんから譲り受けた中学時代の同級生が60年以上保管していた。今春、東京都内の古書店に出品されたのを手塚プロダクションが入手し、手塚さんの作品と確認した。

 作品は、戦争が終わり漫画を描ける自由を手にした解放感にあふれている。闇市や食糧不足など当時の社会問題を題材に風刺も効かせている。手塚プロは「存在すら知らなかった。デビュー直前に描いた可能性もあり、漫画史的に極めて貴重な資料だ」としている。

 見つかったのは、ペンによる直筆で全19ページのモノクロ作品。タイトルはなく、二つ折りで製本するためにB4サイズの紙の裏表に描かれている。

 主人公のオーソレミオ教授が闇市に出かけ、食糧不足を解決しようと教授会を開くがらちが明かず、物語はとんちんかんな方向に展開していく。

 手塚プロによると、闇市やデモ隊などの描写から、45(昭和20)年か46年の作とみられる。漫画のタッチや文字の書体、ストーリーやギャグの運び方に手塚さんらしい特徴がよく出ており、後の手塚作品でおなじみのキャラクター「ヒゲオヤジ」が露店でまんじゅうを売るシーンも。

 手塚さんは当時、大阪大付属医学専門部の学生だった。デビュー作「マアチャンの日記帳」を発表する前後で、医師になるか漫画家になるか迷い、発表のあてもなく習作に取り組んだ時代に当たる。

 手塚プロ資料室長の森晴路さんは「非常に驚いている。手塚がまだ10代だったころの試行錯誤が見えて興味深い。近い将来ファンに公表したい」と話している。

 3日は手塚さんの誕生日で、生誕84年。

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