小澤征爾氏 1年休養…タクト振らず体力回復専念

[ 2012年3月8日 06:00 ]

2010年1月、早期の食道がんであることを公表した小澤征爾氏

 世界的指揮者の小澤征爾氏(76)が、来年2月末まで指揮を予定していた国内外の公演を全て降板すると7日、所属事務所を通じて発表した。2010年に食道がんを摘出。以後も腰痛や肺炎など体調不良に悩まされていた。休養中は低下した体力の回復に専念。小澤氏は「大変つらい決断だった」とコメントしている。

 小澤氏は1月、水戸室内管弦楽団の定期公演でタクトを振ったものの、初日終了後に強い疲労感を訴え、その後のスケジュールの大部分で指揮を取りやめた。検査の結果、肺炎と診断された。

 10年の食道がん摘出手術以後、たびたび定期公演での復活を目指したが、すぐに体調を崩し指揮を取りやめるケースが相次いでいた。翌年1月に手術を行った持病の腰痛も影響し「指揮をしても20分ほどで息が上がってしまう」と明かしていた。

 肺炎は10年12月からの14カ月で3度目。17日から横浜、名古屋、大津の各市と東京都内で歌劇「蝶々夫人」を指揮する予定だったが、主治医は「現在の体力のままで、リハーサルと公演の指揮を行えば、再度体調を崩す可能性が極めて高い」と判断した。

 小澤氏と家族、国内外関係者を交えた話し合いの結果、公演中止を決定。加えて、主治医は「音楽活動の傍らのリハビリでは、本来の指揮活動に十分なまでに体力が回復することは困難」との見解を示した。体重増加と筋力アップに集中するため、1年間指揮活動を中止する決断を下した。

 小澤氏は「大変つらい決断だった。しかしまた皆さまの前で指揮をさせていただくために、この1年間は医師のアドバイスのもとリハビリと食事療法に励みたい」としている。

 がんの再発について、主治医は「再発、転移などは一切認められず、肺炎も治癒している」としており、所属事務所は「また思いきり音楽をやりたいという強い思いによる前向きな決断」とコメントした。

 今夏、長野県松本市で行われる「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」(SKF)は総監督として参加予定。指揮以外では公演に関わる活動を続ける方針。

 ◆小澤征爾氏経過
 ▼10年1月7日 食道がんと活動休止を発表
 ▼8月2日 活動再開。公開リハーサルでタクトを振り「きょうが第二の人生の初日」
 ▼9月5日 長野県松本市でのSKFで指揮
 ▼11年1月末 持病の腰痛が悪化し内視鏡手術
 ▼7月3日 スイス・ジュネーブでの特別公演で約半年ぶりに指揮
 ▼27日 長野県内の中学校での公演で約11カ月ぶりに国内で指揮
 ▼8月21日 松本市でのSKFで復帰後初めて本格公演
 ▼23日 体調不良でSKFの指揮を取りやめ。25日も降板
 ▼29日 体調不良で都内の医療機関に入院。SKF中国公演の全日程をキャンセル
 ▼12年1月19日 茨城県水戸市での公演で復帰
 ▼20日 強い疲労感を訴え、指揮を取りやめ
 ▼2月15日 「蝶々夫人」出番縮小を発表

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2012年3月8日のニュース