震災で親族7人犠牲に 仙台出身歌手 苦節34年初の全国放送に出演

[ 2011年9月24日 08:57 ]

デビュー34年目で全国放送に初めて登場する仙台出身の演歌歌手、花京院しのぶ

 仙台出身の無名の演歌歌手が、デビュー34年目で全国放送に初めて登場する。三味線を弾きながら歌う花京院しのぶ(54)で、27日放送のNHK「歌謡コンサート」(火曜・後8・00)に生出演。東日本大震災で親族7人が犠牲になり、5月にはデビューからともに歩んだ師匠でマネジャーの島津晃氏(享年84)と死別。悲しみを乗り越えて歌う苦労人の“望郷の鎮魂歌”に注目だ。

 花京院が披露するのは7月に発表した「望郷あいや節」。仙台在住の作曲家、榊薫人氏が青森民謡「津軽あいや節」を基調に作った新曲。仙台を地盤に33年間、地道に歌い続けてきた苦労人が、亡き師匠と被災した故郷への思いを込めて歌う鎮魂歌でもある。

 震災で福島第1原発から車で15分ほどのところに住む親族ら6人が死亡、1人が不明になったまま。そんな悲しみを乗り越え「望郷あいや節」はバチで力強く叩く三味線の音と高らかな歌声で始まる。花京院は「もの悲しさの中に力強い希望の思いを込めて元気と勇気が伝わるように歌いたい」と思いを語る。

 78年にデビューして4年間は鳴かず飛ばす。仙台に帰り、地元で20年間歌い続けた。“女・三橋三智也”を目指してモノにした広い声域がビクター関係者の目に留まり、03年に契約した。

 資生堂の元美容部員という経歴もユニーク。トレンドには敏感で、女子高生らが携帯電話をビーズなどで飾り付ける「デコ電」さながらに、愛用の三味線やバチ、着物までデコレーションを施している。「昔からヒカリモノが好きで、舞台の照明に映えるようにと付けたのが始まり」と説明。若者にも親しみやすいド派手なキャラクターはインパクト十分だ。

 ここ数年、歌謡コンサートや紅白歌合戦などNHKの歌番組で火が付き大ヒットする曲が続いている。06年の秋川雅史の「千の風になって」に始まり、07年のすぎもとまさとの「吾亦紅」、昨年は坂本冬美の「また君に恋してる」がそうだった。今年の紅白歌合戦の最大のテーマは被災地の復興。「歌謡コンサート」での反響次第では、花京院も一躍脚光を浴びる可能性がありそうだ。

 ◆花京院 しのぶ(かきょういん・しのぶ)本名林しのぶ。1957年(昭32)8月27日、仙台市生まれの54歳。78年に「めおと道」で日本クラウンからデビュー。花京院は仙台市青葉区にある地名からつけた。03年にビクターに移籍後「望郷新相馬」「望郷やま唄」を発売。「新相馬」のカップリング「お父う」はカラオケ大会で人気が出ており「望郷あいや節」に再収録。

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2011年9月24日のニュース