「証拠で判断を」と弁護人 先入観、どう排除

[ 2010年9月3日 19:43 ]

 「報道やイメージではなく、裁判で見聞きする証拠で判断してください」。東京地裁で3日開かれた押尾学被告(32)の裁判員裁判初公判。弁護側は冒頭陳述で裁判員に繰り返し訴えた。人気俳優の合成麻薬MDMA所持、一緒にのんだ女性の死…。スキャンダラスに報じられた事件に対する“先入観”は、果たして排除できるのか。

 刑事裁判では予断を持たず、法廷で示される証拠だけで判断するのが原則。しかし、初公判に先立つ選任手続きで裁判員に選ばれなかった30代の男性は「先入観をゼロにするのは不可能」と漏らした。
 弁護人の一人は「報道を信じた裁判員が予断を持つと、新事実が出てもうそだと思われかねない」と警戒、この日の初公判では「女性を見殺しにした人物という予断や偏見を一切捨て去る必要があります」とくぎを刺した。
 検察側は静観の構えだ。東京地検のある幹部は「被告がどんなに有名だろうと、法と証拠に基づいて粛々と有罪立証に努めるだけ。裁判員が報道に触れずに過ごすなんて無理。自粛もさせるべきではない」と話した。
 裁判員制度導入前の最高裁の調査によると、陪審制の米国では予断排除のため、陪審員選任手続きで裁判長が候補者に詳しく質問し、予断や偏見があると判断された人を除外する。
 同じ陪審制の英国は、評決に影響を与える報道を法廷侮辱罪として禁止し、事件・裁判報道を規制。参審制を取るドイツなどでは犯罪報道の影響は重視されておらず、特に報道規制はない。
 服部孝章立教大教授(メディア法)は「裁判員に対しては、証拠で裁くという原則を職業裁判官が丁寧に説明すべきだ。プロとしての力量が問われている。メディアも、責任を持って情報発信する必要がある」としている。

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2010年9月3日のニュース