「ケンちゃん」パパで名演、牟田悌三さん逝く

[ 2009年1月10日 06:00 ]

死去した牟田悌三さん

 テレビドラマ「ケンちゃん」シリーズの父親役などで親しまれ、ボランティア活動でも知られた俳優の牟田悌三(むた・ていぞう=本名同じ)さんが8日午後11時33分、虚血性心不全のため東京都目黒区の病院で死去した。80歳。東京都出身。突然の悲報に「ケンちゃん」シリーズに主演した宮脇健(47)=当時は康之=は「実の父を失ったみたい」と悲しみにくれた。

 個性的な脇役としてテレビや映画で活躍した牟田さんが静かに逝った。
 所属事務所などによると、8日午後10時半ごろ、東京・世田谷区の自宅の風呂場で倒れている牟田さんを妻のさ知子さん(78)が発見。牟田さんは救急車で目黒区の東京医療センターに運ばれたが、同11時33分に死亡が確認された。
 一夜明けた9日午後5時すぎ、長男でフジテレビ勤務の夏彦氏(47)が自宅前で取材陣に対応。「風呂は24時間いつでも入れる巡回式で、父は42度とちょっと熱めが好きでした。臨終は母や家族がみとることができましたが、笑ったような穏やかな顔でした」と話した。
 牟田さんは10年前に脳梗塞(こうそく)を患い、3年前には大腸がんが見つかり摘出手術を受けた。体調を見ながら仕事は続けたが、昨年8月に放送されたNHKドラマ「帽子」が最後の出演作になった。
 さ知子さんとはおしどり夫婦で、2男3女の子宝に恵まれた。昨年12月26日から今年1月2日まで、さ知子夫人の希望でウズベキスタンに夫婦水入らずの旅行をして帰国したばかりだったという。
 牟田さんは麻布高校を卒業して北海道大学に進学。在学中に俳優を志し、劇団テアトル・エコーを経てフリーで活動を始めた。54年から草創期のテレビに出演。喜劇的な演技が持ち味で、70年代に人気を集めたTBS系ドラマ「すし屋のケンちゃん」「ケーキ屋ケンちゃん」などケンちゃんシリーズではこっけい味のある優しい父親を演じてお茶の間の人気者になった。79年に始まった同局「3年B組金八先生」では一転、杉田かおる(44)が演じ、中学生で妊娠する女生徒の鬼のような父を熱演した。
 夏彦氏が中学生の時にPTA会長を務めたのが縁で、ボランティア活動にも熱心に参加。中教審専門委員のほか世田谷ボランティア協会名誉理事長などを歴任。99年には子供相談電話「チャイルドライン支援センター」を設立し、顧問をしていた。同センターは今月23日に10周年の記念セレモニーを開催。牟田さんも出席してスピーチする予定だったが、かなわなかった。

 ◆牟田 悌三(むた・ていぞう)1928年(昭3)10月3日、東京都出身。主な出演ドラマは「太陽にほえろ!」(日本テレビ)、「独眼流政宗」(NHK)、「医龍2」(フジテレビ)など多数。映画は「坊ちゃん」「四季・奈津子」「ヒポクラテスたち」など。TBSラジオ「牟田悌三 あなたのための税金相談」では80~05年まで25年にわたってパーソナリティーを務めた。00年にはボランティア活動を評価され、吉川英治賞・文化賞を受賞。ほかに旧厚生省や文部科学省の委員としても活躍した。

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2009年1月10日のニュース