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クラシック・コンシェルジェ

第6回 ウィーン・フォルクスオーパー日本公演 ヨハン・シュトラウスU世 喜歌劇「こうもり」(全3幕 ドイツ語上演日本語字幕付)

 前回はおどろおどろしいまでに衝撃的な現代オペラ「軍人たち」(ツィンマーマン)を紹介したが、今週は一転、明るく楽しいウィンナ・オペレッタを取り上げます。


 今月末から東京で行われるウィーン・フォルクスオーパーの日本公演で上演されるヨハン・シュトラウスII世の喜歌劇「こうもり」。ワルツ王と呼ばれるシュトラウスII世の作だけに全編にわたってワルツやポルカ、チャ―ルダーシュなど華やかなダンス音楽が満載。そのメロディに乗せて展開される物語は19世紀、ウィーンの社交界を舞台に下心いっぱいの男女の駆け引きを見事なまでに軽快なタッチで描き出したもの。ウィーン国立歌劇場をはじめとするヨーロッパの主要歌劇場では、大みそかの演目の定番となっているなどウィンナ・オペレッタの代表作といわれている。


  オペレッタ(喜歌劇)は、その多くがラブ・コメディを題材とした音楽劇。音楽と音楽の間を伴奏なしの台詞でつないでいることが特徴で、ここでしばしばアドリブを交えて客席から笑いを取ったりもする。19世紀後半からウィーンやパリで大流行。恋愛を題材としていてもオペラの場合は悲劇的な結末が大半で、背景に社会的、歴史的な大きなテーマが横たわっていることが多い。

  これに対してオペレッタは必ずハッピーエンドで社会的な問題的提起が行われることも皆無に近い。
 また、ウィンナ・オペレッタは前述したようにダンス音楽が軸となっており、パーティーのシーンなどで登場人物たちが華やかな踊りを披露する。「こうもり」の第2幕は、ロシア人貴族オルロフスキー公爵邸での大夜会のシーンだが、この作品本来の音楽に加えて後半にシュトラウスII世の名作ポルカ「電光と雷鳴」を挿入。登場人物全員が速いテンポの2拍子の音楽に合わせて激しく踊る演出がなされるのがウィーン流だ。観客が沸くとアンコールされ、ステージ上と客席が一体となった楽しい雰囲気に包まれる。

 ウィーン・フォルクスオーパーの来日公演は9年ぶり。日本では、オペレッタ専門劇場のようなイメージが強いが、レパートリーの核は「フィガロ」や「トスカ」などのいわゆる普通のオペラで、時にはミュージカルを上演することもある。ただし、ワーグナーの大作などを取り上げることはない。

  同じウィーンのオペラ劇場でも小澤征爾が音楽監督を務めるウィーン国立歌劇場(シュターツオーパー)をレストランに例えると正装して出かける三ツ星高級店なのに対してフォルクスオーパーはジーンズでも気軽に入れるカジュアル・レストランのような存在と位置付けることができよう。

 国立歌劇場では、年末年始を除けばオペレッタが上演されることはほとんどないが、フォルクスオーパーではあまり知られていない作品も含めて頻繁に取り上げられる。その意味ではウィンナ・オペレッタのメッカと言っても問題はなく、日本でも「こうもり」に加えてスッペの「ボッカチオ」、フロトーの「マルタ」という珍しい作品も上演する。ちなみに「ボッカチオ」は、日本人の歌劇体験の原点ともいうべき浅草オペラの題材になったオペレッタだ。
 

 「こうもり」の演出は、ハインツ・ツェドニクが担当。彼は1940年ウィーン生まれで、70年代から90年代にかけて卓越した演技力を武器に大活躍したテノール歌手。カラヤンをはじめとする名指揮者や名演出家との共演が多く、ウィーン流のオペラ制作については裏の裏まで知り尽くしているといっても過言ではない。06年に新国立劇場でも「こうもり」の演出を手がけており、ウィーンの伝統に根ざしたオーソドックスな舞台作りが印象に残っている。今回もウィーンの芳醇な香りを湛えた上質な笑いと感動を提供してくれるに違いない。指揮はレオポルト・ハーガー、往年の名テノール歌手のルネ・コロがアルフレート役で出演するのも注目される。

あらすじ

【第1幕】
 銀行家アイゼンシュタイン家の昼下がり。遠くから音楽教師アルフレートによる情熱的な求愛の歌が聞こえてくる。アルフレートはアイゼンシュタイン夫人のロザリンデに思いを寄せている。女中アデーレのもとには姉のイーダからロシアの貴族オルロフスキー公爵が催す大パーティーに行こうとの誘いの手紙がくる。彼女はうその理由で休みを願い出るがロザリンデは許さない。実は夫アイゼンシュタインがこの日夜に微罪で短期収監されることになっているからだ。

 休みがもらえずガッカリしたアデーレが姿を消すと庭先からアルフレートが忍び込んでくる。熱烈に言い寄るアルフレートにロザリンデは「今夜、夫が刑務所に行ったら…」と因果を含めて帰す。一方、アイゼンシュタインは訪ねてきた友人のファルケ博士から「収監される前に大いに楽しもう」とオルロフスキー公爵のパーティーへ言葉巧みに誘われすっかりその気になってしまう。ロザリンデは刑務所に行くはずなのに燕尾服の正装で大はしゃぎしている夫の姿に不信感を抱きながらもアルフレートとのアバンチュールを楽しむチャンスと考え、前言を撤回してアデーレに休みを与える。

 誰もいなくなった家でロザリンデとアルフレートが甘いひと時を過ごしていると刑務所長のフランクがアイゼンシュタインを連行するためにやってくる。浮気が発覚しては大変とロザリンデはアルフレートに夫になりすまして欲しいと頼む。「キスをしてくれたらいいよ」とアルフレート。フランクはキスをする2人を引き離し、アルフレートを人違いのまま刑務所に連行していく。

【第2幕】
 オルロフスキー公爵邸の大広間。大勢の招待客が楽しげに歌っている。その中にはオルガという名の女優になりすましたアデーレとその姉イーダの姿も。賑やかな喧騒をよそにホストの公爵は退屈そうな表情。莫大な財産と暇を持て余す公爵はちょっとやそっとのことでは楽しめないのだ。

 そんな公爵にファルケ博士は「今からこうもりの復しゅう≠ニいう名の抱腹絶倒の喜劇をお見せします」とささやく。そこにアイゼンシュタインがやってくる。ファルケ博士は彼を「フランスの貴族ルナール公爵」と紹介する。

 続いて登場した刑務所長のフランクも「フランスの騎士シャグラン」と紹介される。アイゼンシュタインとフランクは共にフランス語を話せないのだが、素性がばれてはまずいと無理やりフランス語もどきの会話を繰り広げ笑いを誘う。最後に到着したゲストは仮面をつけたハンガリーの貴婦人。実はこの女性は変装したロザリンデなのだが、アイゼンシュタインは自分の妻とはまったく気付かない。あろうことか、自慢の懐中時計を小道具にして口説きにかかる。ロザリンデは夫の浮気の証拠をつかもうとこの時計を取り上げてしまう。

 他の客も仮面の貴婦人に興味を持ち仮面を取るようせがむが、正体知っているオルロフスキー公爵は「私の屋敷内では誰もが好きな格好でいて良い」とかばう。ロザリンデもハンガリーの音楽チャールダーシュに合わせて情熱的な歌を披露しハンガリー人だと皆を信じさせる。アイゼンシュタインは公爵に促され、以前催された仮装パーティーで、こうもりに変装したファルケ博士に大恥をかかせたエピソードを得意げに話す。

 実はこれ、アイゼンシュタインらがパーティーの仕掛けの中で騙されていることの原因だったのだ。公爵の音頭でシャンペンのグラスを傾け大騒ぎしているうちに朝を告げる鐘の音が聞こえる。

 刑務所に出頭しなければいけないアイゼンシュタイン、刑務所に戻らなければならないフランクの2人はお互いの素性を知らぬままに大慌てで公爵の屋敷を後にする。


【第3幕】

 刑務所の所長室。看守のフロッシュは朝から酒浸り、監獄からはアルフレートの歌声が響いてくる。そこにベロンベロンに酔った所長のフランクが帰ってくる。頭の中は先ほどまでのパーティーの喧騒でいっぱい。そんな彼の後を追いかけてアデーレとイーダがやってくる。

 フランスの騎士ならば、女優になりたいとの彼女の夢をかなえるパトロンになってくれることを期待して後をつけてきたのだ。アデーレは「自分は本当は女優ではないが演技力は十分ある」と猛アピール。そこへアイゼンシュタインが出頭してくる。あわてたフランクが「自分は騎士ではなく刑務所長だ」と告白すると、アイゼンシュタインも素性を明かす。しかし、フランクは「アイゼンシュタインは昨夜自宅で妻と仲良くくつろいでいるところを自分が逮捕し収監した」と取り合わない。

 驚いたアイゼンシュタインは一計を案じて弁護士に変装しロザリンデと偽の自分を尋問。妻の浮気の証拠を掴んだと激怒するとロザリンデもすかさず前夜取り上げた懐中時計を突き付ける。そこにオルロフスキー公爵とファルケ博士らが賑やかに登場。ファルケ博士は「昨晩からの出来事すべてはこうもりの復しゅう≠ニして自分が仕組んだ狂言だ」とタネ明かしをする。

 また、オルロフスキー公爵はアデーレのパトロンを買ってでる。アイゼンシュタインにとっては釈然としない面は残っているものの、この事態を受け入れるほかない。皆が「すべてはシャンペンの泡のいたずら」と笑い飛ばし幕となる。
主なスタッフ&キャスト
総監督 ロベルト・マイヤー
演  出 ハインツ・ツェドニク
指  揮 レオポルト・ハーガー
舞  台 パンテリス・デッセイラス
衣  装 ドリス・エングル
ロザリンデ ナンシー・グスタフソン、エディット・リーンバッハー
アデーレ ダニエラ・ファリー、アンドレア・ボグナー
イーダ マルティナ・ドラーク
オルロフスキー公爵 ヨッヘン・コワルスキー
アイゼンシュタイン ディートマール・ゲルシュバウム、セバスティアン・ホレチェク
アルフレート ルネ・コロ
フロッシュ ハインツ・ツェドニク
管弦楽 ウィーン・フォルクスオーパー管弦楽団
合  唱 ウィーン・フォルクスオーパー合唱団
バレエ ウィーン国立バレエ団
作品データ

原作 :アンリ・メイヤックとリュドヴィク・アレヴィ 喜劇「夜食」
台本 :カール・ハフナー リシャール・ジュネ(ドイツ語)
初演 :1874年4月5日 ウィーン テアター・アン・デア・ウィーン
形式 :喜歌劇(Komische Operette)

今回紹介した作品と公演について、5月12日放送のTBSのインターネット&デジタル・ラジオOTTAVAの番組「con brio」(22:00〜)内の「クラシック・コンシェルジェ」のコーナー(23:00〜23:30)で楽曲もオンエアしながらさらに詳しく紹介します。なお、放送終了後から次回放送までの1週間はオン・デマンドでいつでも聴くことができます。ぜひ、お聴きください。

公演日程

5月23日(金)18:30 東京文化会館大ホール
24日(土)14:30 東京文化会館大ホール
25日(日)14:30 東京文化会館大ホール


音のインテリア、パソコンで聴くクラシック:http://ottava.jp/

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