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井上尚弥“50億円最強決定戦”WBSS参戦へ意欲「決まれば出ますよ」

[ 2018年4月10日 09:50 ]

海岸沿いの階段を駆け上がる井上尚弥。左は弟・拓真
Photo By スポニチ

 ボクシングのWBA世界バンタム級タイトルマッチ(5月25日、東京・大田区総合体育館)で3階級制覇を狙う井上尚弥(25=大橋)が「ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)」への出場に意欲を示した。9日に熱海で開始した試合前恒例の走り込み合宿で、「まずは次の試合に勝たないと」と前置きしつつ、「ジムにもその話が来ているみたいだし、正式に決まれば出ますよ」と話した。

 WBSSとは米国とドイツのプロモーターが企画して昨秋にスタートした「賞金争奪最強決定トーナメント」で、初年度はクルーザー級とスーパーミドル級に各8選手が出場。賞金総額5000万ドル(約53億円)、優勝賞金各1000万ドル(約10億7000万円)で行われ、「ムハマド・アリ・トロフィー」を懸けた決勝戦はクルーザー級がウシク(ウクライナ)―ガシエフ(ロシア)、スーパーミドル級はグローブス(英国)―スミス(同)の対決に決まった。プロモーターの1人、ザウアーラント氏は今年の後半からバンタム級、フェザー級、ライト級、スーパーフライ級などの軽量級で第2回大会を計画していると明かしており、その目玉選手としてスーパーフライ級からバンタム級に階級を上げた井上にオファーしたとみられている。

 WBSSに出場できるのはWBA、WBC、IBF、WBOの各団体王者とランキング15位以内の選手。第1回大会のクルーザー級は王者4人が集結し、「最強決定トーナメント」にふさわしいカードが実現した。バンタム級に関しては井上の挑戦を受けるWBA正規王者ジェイミー・マクドネル(英国)のプロモーター、エディー・ハーン氏が、傘下のWBAスーパー王者ライアン・バーネット(同)はWBSSに出場する見通しだと明かし、英国を主戦場とするWBO同級王者ゾラニ・テテ(南アフリカ)も参戦するのではと予想している。WBC(ネリが剥奪)とIBF(バーネットが返上)の王座は現在空位だが、井上が「スーパーフライ級よりも強い選手が多いと思う」と話すように、魅力あるトーナメントを成立させる役者はそろっている。

 WBO世界スーパーフライ級王座を7度防衛した井上だが、パウンド・フォー・パウンド(全階級を通じての最強ランキング)にも名を連ねる強さが災いし、統一戦を何回も断られるなど望んでいたビッグマッチは実現しなかった。だが、トーナメントなら対戦相手は逃げられず、王者同士が対決する統一戦も実現しやすい。海外ではローマン・ゴンサレス(ニカラグア、帝拳)を2度破ったWBC世界スーパーフライ級王者シーサケット(タイ)と対戦せずに階級を上げた井上に不満を示す声もあるが、日本人とタイ人の対戦ではビッグマッチレベルの興行は難しい。英国勢がいるバンタム級の方が、はるかに大舞台に上がりやすいだろう。マクドネル戦は3階級制覇という到達点ではなく、世界が注目するビッグマッチ路線へのスタート地点と言える。 (スポーツ部専門委員・中出 健太郎)

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2018年4月10日のニュース