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5・12世界最強ロマチェンコ戦 リナレスが体格差と機動力で迎え撃つ

[ 2018年3月21日 10:00 ]

ロマチェンコ戦へ向けてジムワークを再開したリナレス
Photo By スポニチ

 「日本ボクシング史上最大のビッグマッチ」と表現していいだろう。昨夏に亀海喜寛(帝拳)がミゲル・コット(プエルトリコ)と対戦した際も同じ表現が使われたが、コットは引退間際のスター選手だった。だが、日本育ちで3階級を制覇したWBA世界ライト級王者ホルヘ・リナレス(ベネズエラ、帝拳)の相手に決まったのは、現在世界最強の1人と評価されるスーパースターのワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)だ。5月12日(日本時間13日)、舞台は格闘技の殿堂・ニューヨークのマジソンスクエアガーデン。「昔から超やりたかった。誰でもできるわけじゃないから」。リナレスは流ちょうな日本語ではしゃいだ。

 ロマチェンコの凄さは肩書きだけでも分かる。アマ戦績は397戦396勝1敗。五輪は08年北京をフェザー級、12年ロンドンをライト級で制し、2大会連続で金メダルを獲得した。プロでは2試合目で体重超過の相手に判定負けしたものの、世界最速記録の3戦目でWBOフェザー級王座を獲得。7戦目でWBOスーパーフェザー級王者となり、井上尚弥(大橋)の8試合を更新する世界最速2階級制覇を達成した。リナレス戦にも世界最速12戦目での3階級制覇が懸かる。

 愛称は「ハイテク」。抜群のスピードとフットワークでたちまち死角に入り込み、正確無比な高速コンビネーションをこれでもかと叩き込んで蜂の巣にする。プロ5戦目からはもん絶・失神KO劇を3試合続け、最近4戦はいずれも相手の棄権によるTKO勝ち。機械が人間の心を折るような恐ろしい戦いぶりで、パウンド・フォー・パウンド(PFP、全階級を通じての最強ランキング)は米リング誌で3位、スポーツ専門局ESPNでは1位に選ばれている。

 リナレスもハンドスピードとコンビネーションの速さが武器なのだが、正式発表前からブックメーカーのオッズはロマチェンコの圧倒的有利。しかし、かつてリナレスを指導した名トレーナーのフレディー・ローチ氏は不利を認めながらも、番狂わせの「大きな要素になり得る」と2人の体格差を指摘した。今回がライト級転向初戦のロマチェンコは身長1メートル70、リーチ1メートル66。リナレスは1メートル73、1メートル75だが、サイズやパワー以上に同級で7年以上のキャリアを誇り、リミット61・2キロの戦いに体がなじんでいるのが大きい。リナレス自身、ライト級転向後に2連敗するなど階級の壁を味わった経験があり、3階級目のロマチェンコは「スピードが(スーパーフェザー級までと)絶対に同じじゃないと思う」と、持ち味が生かせなくなるのではと予想している。

 「僕の一発が当たったら分からないよ」とパワーにも自信を見せつつ、「一番大切なのは足」だという。機動力で対抗できなければ勝負にならない、と今月中旬には村田諒太らのフィジカルを担当する中村正彦トレーナーとマンツーマンでキャンプを張り、1週間で計140キロ走破してスタミナを蓄えた。4月にはラスベガスで練習を開始し「小さくて速い選手」とスパーリングを予定。昨年12月のIBFスーパーフェザー級王座決定戦で尾川堅一(帝拳)に惜敗したテビン・ファーマー(米国)らをパートナーにするつもりだ。

 世界中の関係者とファンが議論する「誰がロマチェンコに勝てるのか」に一発回答できるかどうか。ビッグマッチを熱望していたところへ「3、4年前からやりたかった相手」との対決が実現。プロ48戦目の天才児のモチベーションが、最高に高まっているのは事実だ。(スポーツ部専門委員・中出 健太郎)

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2018年3月21日のニュース