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引退とは――大仁田厚と佐々木基樹

5月には試合直後の控え室で引退を表明した佐々木だったが…
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 【中出健太郎の血まみれ生活】元参院議員のプロレスラー、大仁田厚の引退試合を取材する機会があった。熱狂的なファンで超満員となった後楽園ホールは壮観。入場時にはもみくちゃになってリングになかなか到達できなかった大仁田を見て、カリスマ性に感心するとともに、これだけのブランド力を持つプロボクサーが果たして何人いるのかと考えてしまった。

 引退→現役復帰を繰り返した大仁田は、今回で7年ぶり7回目の引退。還暦を迎えた今度こそ本当と主張し「階段を見ると、自然とエレベーターを探してしまう自分が嫌になった」と説明していた。だが、“あうんの呼吸”があるとはいえ、有刺鉄線ボードに叩きつけられ、いすやギターで頭をぶん殴られ、そこからパワーボム6連発を見せる60歳はそれだけで単純に凄い。「最後の一言を言うとしたら、俺は死ぬまでプロレスラー」の言葉通り、批判などどこ吹く風で何度でもリングに舞い戻る諦めの悪さを発揮してこそ、邪道・大仁田厚なのだろう。

 シナリオがなく、健康管理の厳しさから単純には比較できないが、今年のボクシング界では「まだできるのではないか」と思わせる引退が相次いだ。元世界王者では内山高志、三浦隆司、小国以載、他に金子大樹、天笠尚、土屋修平もそうだ。三浦については引退後にも米国からオファーがあり、その試合が暫定王座決定戦に昇格していた可能性もあっただけに、もったいなかった。ただ、世界王座に返り咲く練習に耐えられるのか自分の体と心をじっくり見極めた内山、右手の状態が元々悪かった小国など、それぞれ「限界」と決断するだけの理由があった。家族がいるから引退するというケースも多い。

 昨年、2年9カ月ぶりに現役復帰して注目された42歳の元東洋太平洋2階級制覇王者・佐々木基樹は今年、引退を2度表明した。最初は5月。6回戦に0―3で判定負けすると、直後の控え室で「地球上、いかなる人間も時の流れには逆らえない」と通算2回目の引退を口にした。ところが引退届は提出されず、日本ランキングもライト級の下位に名前がいつまでも残っていた。そして11月19日、山口県下関市でアクセル住吉と10回戦を行うことが決定。アクセルは日本ライト級2位で、勝てば日本王座挑戦も見えてくる絶妙なマッチメークだった。

 結果はジャッジ1人がドロー、2人が1点差の0―2判定負け。敵地だったことを考慮すると、後楽園ホールなら佐々木の勝ちもあったかもしれない。だが、佐々木は自身のブログで3回目の引退を表明。試合翌日、ジムへあいさつに訪れた際に「引退濃厚?」と問うと、「いや、引退です」と答え、しつこく確認しても「もうやらないですよ」と強調した。一方、ジムスタッフは「引退する」とは本人から聞いていないとしている。

 ブログの文章を見ても分かるように、佐々木は頭が切れる。なぜボクシングを早々と辞め、成功が見込める他の道へ進まないのか不思議だった。むしろ、どんなに器用でも思うようにいかない魅力に取りつかれ、辞める理由を上回ってボクシングを離れられなかったのではないか。「最後まで波乱の人生だと思っている。60歳だからこそ、また夢を追いかけていきたい」と話す大仁田と、根っこの部分では同じなのではと思う。(専門委員)

 ◆中出 健太郎(なかで・けんたろう) 50代突入から8カ月。スポニチ入社後はラグビー、サッカー、ボクシング、陸上、スキー、海外サッカーなどを担当。後楽園ホールのリングサイドの記者席で、飛んでくる血や水をかぶりっぱなしの状態をコラムの題名とした。新品や白っぽい服では記者席に座らないようにしているが、選手の出血がひどくなると、レフェリーには早めにストップしてほしいと祈るような気持ちになる。

[ 2017年11月26日 09:30 ]

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