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井岡 王座返上で引退危機、父「プライベートに時間取られた」

[ 2017年11月10日 05:30 ]

4月にV5戦を勝った井岡だったが…引退の危機に。左は父の一法会長
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 WBA世界フライ級王者の井岡一翔(28=井岡)が引退の危機を迎えていることが9日、分かった。父でもある井岡一法会長が大阪市内の同ジムで会見し、同日付で王座を返上したことを発表。12月31日に計画していた6度目の防衛戦に向けて心身の準備が整わないためとし、このままリングを去る可能性についても触れた。

 現役世界王者が異例ともいえる理由でベルトを失った。本人が不在の会見で、父でもある井岡一法会長は「ベルトは返上です。大みそかに準備が間に合わない。本人に聞いても週3、4回は走っている。けど、スパーリングとかジムワークは別」と、世界レベルで戦える状態にない現状を説明した。

 これで2011年から昨年まで6年連続でリングに立ち、恒例となっていた大みそかの試合も途絶えた。そして会長の口からは、さらに衝撃的な言葉も飛びだした。

 「もう一度スイッチが入れば再スタートする。モチベーションがないんであれば、引退するしかない。そうなるなら、ちゃんとした引退会見をやる。二つに一つ」

 井岡は4月23日にノクノイ・シットプラサート(タイ)を下し5度目の防衛に成功。具志堅用高氏が持つ日本ジム所属選手歴代1位の世界戦14勝に並んだ。5月には歌手でタレントの谷村奈南(30)と結婚。順風だった世界3階級制覇王者に何が起こったのか――。

 8月に、WBAから同級1位のダラキアン(ウクライナ)と指名試合を行うように指示があった。恒例の年末リングで、この世界戦ができるように夏以降、井岡と話し合いを重ねてきたという同会長は、苦渋の表情で言葉を選んだ。「新婚生活で(東京に)住まいもある。集中して今までみたいにできていない。やっぱりこっち(大阪)に帰ってきて、奥さんと自分の防衛戦前に(大阪で)仮住まいでもいいから、と。そんな話もした。でも、環境を変えられなかった。プライベートの方に(時間が)取られている」。4月に5度目の防衛に成功後、大阪を離れて東京で新婚生活を送ったことが今回の事態につながったことを示唆した。

 通常、世界戦ともなれば、陣営とボクサーは一心同体となる。しかし陣営は物理的に距離が離れたことで、これまでとは違う困難に直面している。「プライベートなことだから」と同会長は、井岡の生活に踏み込めないもどかしさも漂わせた。一方で、再起への期待は捨てていない。

 「来年、世界前哨戦とか、ノンタイトルをやるかもしれない。スイッチ待ち?そう」。再起か、引退か。次の会見が試合の発表であることをファンは望んでいる。

 ▽王座返上 例えば日本王者が世界挑戦する際、あるいは世界王者が階級を変えたり、王者のまま引退する時などに行われる。最近では昨年12月にWBC世界スーパーバンタム級王者の長谷川穂積が、現役王者のまま引退を発表。WBCに王座を返上した。空位となった王座は決定戦を行い新王者を決める。今回の井岡のように、調整が間に合わないとの理由で返上するのは極めて異例。

 ◆井岡 一翔(いおか・かずと)1989年(平元)3月24日生まれ、堺市出身の28歳。中学からボクシングを始めて大阪・興国高で6冠達成。東農大に進んだが、北京五輪出場を逃し、09年4月プロデビュー。11年2月にプロ7戦目でWBC世界ミニマム級王座獲得。12年6月にWBA王者・八重樫東(大橋)との同級統一戦に勝ち日本人初の複数団体統一王者となる。同年12月、WBAライトフライ級王者。15年4月にWBA世界フライ級王者となり3階級制覇。今年4月に5度目の防衛に成功。身長1メートル65。右ボクサーファイター。

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