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持ってる男――WBA世界ミドル級タイトルマッチ

エンダムに7回TKO勝ちし、涙する村田
Photo By スポニチ

 【中出健太郎の血まみれ生活】一夜明け会見でカメラマンに囲まれる村田諒太を見ながら、帝拳ジムの浜田剛史代表が感心したように言う。「大変な強運の持ち主ですな」。アマで五輪金メダル、プロで世界王者は実力があってこそ。だが、それが難関のミドル級となると、「実力も大事だけど、運がかなり左右する」という日本人初の同級世界王者・竹原慎二氏の指摘が恐らく当たっている。

 しかも、村田はその王座奪取を、不可解な判定負け→TKOでリベンジというストーリーで飾った。「最初にすんなり獲っていれば、世界的にはほとんど注目されなかったでしょう。だけど、初戦で誰もが“これはおかしい”という判定が出て話題になって、米国でも注目される中で、再戦では完璧に勝ったんですから」。アッサン・エンダムの体調不良も込みで、浜田代表は「運がありますよ」と繰り返した。

 当日は各局が選挙速報を流す中、視聴率は平均20%超えの一人勝ち。台風の影響で在宅率も高かったはずだ。米スポーツ専門局ESPNで全米へ中継されたから、生放送時はともかく同局の看板番組である「スポーツセンター」で何度も映像が流れ、多くの人が村田の姿を目にしただろう。10月22日は、帝拳の世界王者第1号・大場政夫が世界フライ級王座を獲得した日でもある。本当に“持ってる男”だ。

 「再戦は村田有利」の前評判とは逆に、記者は村田の負けもあると思っていた。週2回許可された練習取材で、一向に状態が良くならなかったからだ。ロープに詰めた場面で連打が出ない、ボディーが手打ち、被弾も多い…。スパーリングの内容が悪く、10ラウンドの予定が7ラウンドで打ち切られたのは10月2日。試合の3週間前だ。「今回は勝って当然」と期待される重圧と、勝つための試行錯誤を重ねた結果、心身ともにバランスが崩れていた。試合後に内情を明かした帝拳の本田明彦会長によると、「最悪だったのは公開練習」で10日前の10月12日。「そこから3日で精神的に開き直った」のだという。試合2日前の会見で「プレッシャーは引き連れて戦うのがボクサーと思っている」と言い切った時、覚悟はできていたことになる。

 1ラウンド。エンダムを全く恐れず、スムーズにボディーから上へつなげる戦いぶりに勝ちを確信した。試合後、序盤から意識して手数を出したのかと聞くと「今日は自然でしたね。初めに打とうとしたらクリンチに来て、(エンダムは)余裕がありそうな感じではなかったので、それだったら打ってしまえと」と答えた。一度戦い、エンダムのパンチはブロックで防げると分かっていたのも大きい。セミファイナルではガードを固めながら受け身だったトマ・マソンが比嘉大吾に破壊されたが、村田は前進しながらブロックではじく攻撃的な防御で、相手を何もできない“詰み”の状態にさせた。腹が据わってしまえば、負ける相手ではなかったのだ。

 「いい先輩を持ったと思います」。村田は同じく再戦で世界を獲ったジムの先輩・粟生隆寛から「負けるわけないと思って俺は行った」とアドバイスを受けていた。竹原はミドル級王者が米国人よりも交渉しやすいアルゼンチン人だったことが幸運だったという。村田はマッチマーク、練習環境、さまざまなサポートなど周囲にも恵まれて運を引き寄せた。試合用に作成する帝拳チームTシャツの今回のフレーズは「MAKE THIS OURS(みんなで成し遂げる)」。チーム力が発揮されたのは、もちろん中心に持ってる男がいたからだ。(専門委員)

 ◆中出 健太郎(なかで・けんたろう)2月に50代へ突入。スポニチ入社後はラグビー、サッカー、ボクシング、陸上などを担当。トリプル世界戦を始めて取材したのは1998年8月の横浜アリーナ。全てWBCタイトルで、ミニマム級ではロッキー・リン、ライト級では坂本博之がそれぞれ判定負けし、バンタム級の辰吉丈一郎が負傷判定防衛で何とか「日本勢全滅」を免れた。今回はトリプル戦で日本勢は3戦全勝。日本ボクシングは強くなった。

[ 2017年10月28日 09:00 ]

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