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【浜田剛史氏が明かす凄さ】“分析マニア”の村田 欠点まで徹底研究

[ 2017年10月23日 09:25 ]

WBA世界ミドル級タイトルマッチ12回戦   ○同級1位・村田諒太 TKO7回終了 王者アッサン・エンダム● ( 2017年10月22日    両国国技館 )

ベルトを腰に巻き、笑顔の村田
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 初戦の敗者がダイレクトリマッチ(再戦)で勝つことは簡単ではない。お互いに手の内を知り尽くしているし、敗者はやはり心理面の痛手を消し切れず、後遺症を残しているものだ。

 村田は初戦で敗れたが、判定問題により、敗者意識はむしろ、エンダムの方が強かったと思う。だからエンダムは前回と違い、接近戦を挑んできた。しかし、序盤の戦い方は、打ち合おうか、足を使って動こうか、と迷いが見られた。村田は前回の戦い方に、より手数を加えることと方向性に迷いはない。その差が勝負を分け、今回は何をしてもダメだとエンダムを戦意喪失させた。

 私は村田を勝たせることを役目としてプロデビュー戦から見てきた。面白いことは、村田という選手が“分析マニア”のボクサーだということだ。相手のいいところ、悪いところ、自分のいいところ、さらには悪いところまでも、徹底的に、あるいは趣味的に分析・研究し、常に考えて臨む。普通、ボクサーは自分の弱点をあまり認めたがらないものなのだが…。村田には、そうして戦う自分をまた、冷静に分析しているもう一人の自分がいる。評論家が戦っているようなものだが、自分の土台を知っているから教えられたことに対する理解度が高い。ダメなら修正する力もある。学習能力の高さとともに、緊張する場面でもそれを楽しんでしまうのは、そうしたところから来ている。

 私がWBC世界ジュニアウエルター級(当時=現スーパーライト級)の王座を獲った(1986年7月24日)時代、世界の中量級は激しい動きを見せていた。特にミドル級(リミット72・57キロ)は、シュガー・レイ・レナード、トーマス・ハーンズ、マービン・ハグラー(ともに米国)らの強豪がリーグ戦のようにしのぎを削っており、日本人選手があのハイレベルな渦の中に入るのはとても無理、夢物語の感があった。層の厚さを含めたミドル級の充実は、このクラスの体格が、欧米人には平均的だからだろうし、競争意識の激しさが、こうしたスーパースターを生み出していた。村田が今、最難関のクラスの頂点に立ったことは、感慨深いものがある。ときを経て人は変わっても、ミドル級を構築する本質は変わらない。その意味で“歴史的快挙”といっていい。おめでとう。(帝拳代表=元WBC世界スーパーライト級王者)

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