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山中 V13再挑戦も 新王者ネリ 薬物陽性、無効試合の可能性

[ 2017年8月25日 05:30 ]

ドーピング検査で陽性反応が出たネリ
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 ボクシングのWBC世界バンタム級タイトルマッチ(15日、京都)で山中慎介(34=帝拳)に4回TKO勝ちして新王者となったルイス・ネリ(22=メキシコ)に薬物疑惑が浮上した。試合前の検査で筋肉増強と減量に効果があるジルパテロールが検出されたとWBC(世界ボクシング評議会)が23日に発表。再検査の結果次第では無効試合となる可能性がある。

 山中のV13を阻止した男に薬物疑惑の影が差した。ネリの尿検体がドーピング検査でジルパテロールに陽性反応を示したのは、試合当日ではなく来日前の7月下旬。薬物撲滅を掲げるWBCの依頼によるボランティア反ドーピング協会(VADA)の抜き打ちでの検査だった。結果が出るのが遅かったために試合は行われてしまったが、WBCのマウリシオ・スライマン会長は予備であるB検体と試合後に採取した検体の再検査を指示。連絡を受けた日本ボクシングコミッション(JBC)も検査結果を待ち、WBCと対応を協議する方針でいる。

 筋肉増強と減量に効果があるジルパテロールは牛や豚など家畜の筋肉を増やし、成長を促進するために飼料に入れる添加剤。筋肉増強剤のクレンブテロールと作用が似ており、ともに世界反ドーピング機関(WADA)から禁止薬物に指定されている。ただし、クレンブテロールが検査で検出された選手が「摂取した肉に混入していた」と主張することは他競技を含めても多く見られ、スライマン会長も「クレンブテロールのケースとよく似ている。ネリはこの物質が入った肉を食べた可能性がある」と指摘した。

 再検査の結果によって、ネリはおとがめなしから王座剥奪の可能性まである。後者の場合、4回TKO勝ちした山中戦は無効試合となることが確実だ。王座の扱いについては不明だが、落ち度のない山中にベルトが戻っても不思議ではない。ただ、帝拳ジムの本田明彦会長は、山中に王座は戻らず王座決定戦が行われる場合は優先的に出場の権利が与えられるとの見解を示し、「WBCとJBCの決定を待つだけ」と話すにとどめた。

 具志堅用高が持つ日本記録の13連続防衛に失敗した山中は「少し考えさせてほしい」と進退を保留中だが、薬物騒動の行方も見守る必要がありそうだ。

 ▽山中―ネリVTR 両者ともにリミットの53.5キロで前日計量を一発パス。試合は山中がジャブとワンツーで好スタートを切ったものの、2回終盤にネリが左フックをヒットさせ、3回から得意の連打で攻勢に出た。4回、山中がロープ際で連打された場面でトレーナーがリングインしてタオルを投入し、4回2分29秒TKO負けで王座陥落。陣営からはタオル投入が早すぎるとの指摘が出た。

 ▽WBCの薬物撲滅への動き 「クリーン・ボクシング・プログラム」として全階級の世界王者とランキング15位までの抜き打ちドーピング検査をボランティア反ドーピング協会(VADA)に委託。応じない選手はランキングから除外される措置が取られる。

 ▼JBC安河内剛事務局長 WBCは総合的に勘案し慎重に判断すると思う。

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