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7月のパッキャオVSホーン戦を村田諒太が占う

[ 2017年6月27日 22:32 ]

(左から)マニー・パッキャオとジェフ・ホーン
Photo By ゲッティ イメージズ

 7月から8月にかけ、日本人選手が出場する試合を含めて、海外で注目の世界タイトルマッチが立て続けに行われる。その幕開けともいえる試合が7月2日、オーストラリアのブリスベンで開催されるWBO世界ウエルター級タイトルマッチ、王者マニー・パッキャオ(38=フィリピン)vs挑戦者の同級2位ジェフ・ホーン(29=オーストラリア)の12回戦だ。20キロ近い体重の壁を破って6階級制覇を成し遂げている世界的なスーパースター、パッキャオの試合とあって、会場は5万人収容のスタジアムが用意された。その一戦について、当日にゲスト解説を務める12年ロンドン五輪金メダリストでWBA世界ミドル級2位の村田諒太(31=帝拳)にWOWOWが独占インタビューを行い、見どころなどを聞いた。

 ■国を背負って戦うプレッシャー

 ――フィリピンの上院議員でもあるパッキャオは昨年4月に一度は引退したが、復帰すると思ったか。

 村田「彼はフィリピンの恵まれない人たちを助けている人で、それがボクサーとしての現在のパッキャオのモチベーションなんだと思います。議員の報酬だけですべてを賄えるかというと難しい。だから(多額の報酬が見込める)ボクシングは不可欠なんでしょう」

 ――11月の復帰戦で世界王座に返り咲いた。

 「上院議員の仕事が忙しいのでしょうね。以前のような練習量が確保できていないと思うので、スタミナを使う戦い方ではなかったと感じました。全盛期のスピードではなかったけれど、出入りの速さはありましたね。以前のように強引にKOを狙っていくボクシングではないけれど、その分、試合運びが巧みだなと思いました。今は相手にとって捉えどころのない、勝ちづらい選手になっていますね」

 ――パッキャオは国を背負って戦っている。

 「フィリピンは国外に出て働いている人が多く、そんななかでパッキャオは多くの人に勇気を与えている。パッキャオ自身も米国に渡って活躍しているわけですから。ビッグマネーを得て、フィリピンの人たちに夢を見せたから人気に火がついているのでしょう」

 ――その分、プレッシャーも大きいのでは?

 「もちろんプレッシャーはあると思うけれど、もう慣れているんじゃないですか。僕自身、世界戦の前も世界戦の時もプレッシャーはあったけれど、“負けたらどうしよう”とかいう気持ちに関するコントロール能力は経験を通じて上がったと思います。パッキャオぐらいになると、そういう点もたけていると思います」

 ――パッキャオの一番の魅力はどのあたりか。

 「一瞬の踏み込みで相手を倒してしまうスピードだと思います。普段はボクシングを見ない人がパッキャオの試合を見ても、芸術的なものを感じられると思います。ハイライトなんて見たら絶対に凄いと感じると思いますよ」

 ――20キロ近い体重の壁を乗り越えて6階級制覇を成し遂げている。

 「50・8キロのフライ級から70キロ弱のスーパーウエルター級まで制覇したんですから、考えられないことですよ。自分よりも二回りも大きい相手と戦って打ちのめすんだから、凄いの一言しかないでしょう」

 ■パッキャオの勝利を予想「番狂わせの可能性も…」

 ――今回は相手の地元、オーストラリアでの試合となった。

 「僕はオーストラリアには行ったことがないし、アマチュア、プロを通じてオーストラリアの選手と戦ったこともないんです」

 ――5万人収容のスタジアムが会場で、試合1カ月前の時点で4万枚以上のチケットが売れたらしい。



 「元々オーストラリアはスポーツ自体が人気のある国だし、これからのスポーツビジネスの場所としても面白いところだと思います。今は米国から英国にボクシング熱が移り、その後に続くのはどこかと考えた場合、オーストラリアで火がつくと、いいマーケットになると思います。市場が増えるということは選手のチャンスも増えるわけですから」

 ――もしも自分がパッキャオと同じ体重で試合をするとしたら、どう戦うか。

 「ガードを固め、パッキャオが踏み込んで入ってくるところに右ストレートを合わせるでしょうね」

 ――パッキャオがボクシング界に与えた影響は大きい。

 「夢を見させてくれましたよね。階級を飛び越えて世界チャンピオンになったことももちろんだし、米国では最初、ピンチヒッターとして世界戦に出て勝ち、強豪を次々と倒して現在の地位にいる。“ボクシングには夢がある”。それを見せてくれましたね」

 ――今回の相手、ホーンは村田選手がミドル級で金メダルを獲得した12年ロンドン五輪に出場し、ライトウエルター級でベスト8に入っている。

 「(五輪では)オーストラリア代表のミドル級の選手とは戦う可能性があったのでチェックしていましたが、ライトウエルター級の選手(ホーン)は記憶にないんですよ。プロでもホーンは世界的に決して知名度が高いとは言えないけれど、それでもパッキャオと戦うことになったので、そういう状況がつくれることを考えてもオーストラリアには注目ですね」

 ――今回の試合に備えてパッキャオはオーストラリアの選手と、ホーンはフィリピンの選手とスパーリングをしているという。

 「国によって独特のリズムがありますからね。相手の国の選手とスパーリングをするのは理に適っていると思います」

 ――試合展開の予想は。

 「パッキャオはステップを巧みに使って出入りのボクシングをすると思います。そして、隙を狙ってサウスポーからの左ストレートを打つというスタイルで行くでしょう。これに対し、ホーンは直近の試合ではダウンしているけれどばん回しているし、気持ちが強そうですね。だから面白い試合になると思います」

 ――パッキャオのKO勝ちが期待されている。

 「最近のパッキャオはリスクを避けて強引に出ていかないところがあるので、僕は“パッキャオの判定勝ち”と予想します。でも、もちろんパッキャオのKO勝ちもあると思います」

 ――波乱の可能性はあるか。

 「あると思います。パッキャオにとってオーストラリアでの試合は初めてだし、いろんな条件が違ってきますからね。試合間隔も8カ月あるし、上院議員の仕事をしながらどこまでトレーニングできているか。ベテランの選手が敵地に行って好調が伝えられながら負けるということはあるので、番狂わせもある状況だと思います」

 ――今回の試合、どこに注目か。

 「1つは、パッキャオという選手のボクシングの面白さ、スピード感であるとか一瞬の踏み込みであるとか、そんな芸術性に注目してもらえれば嬉しいですね。もう1つは、2人の男が殴り合う、それを見るために5万人の人が集まる。これも凄いじゃないですか。そんな世界観も見てほしいですね」

 なお、村田諒太がゲスト解説として出演する7月2日(日)午前11時からのWOWOWプライム「マニー・パッキャオ王座防衛戦」、7月16日(日)午前11時からのWOWOWライブ「三浦隆司 世界王座再挑戦」は、いずれも生中継でお届けする。

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