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尚弥、左スイッチ“二刀流”で圧倒3回KO 米国進出へ予行

[ 2017年5月22日 05:30 ]

WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ   ○王者・井上尚弥 3回1分8秒KO 同級2位リカルド・ロドリゲス● ( 2017年5月21日    有明コロシアム )

2回からサウスポースタイルに変化した井上
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 「左の尚弥」だ。ボクシングのWBO世界スーパーフライ級王者・井上尚弥(24=大橋)が指名挑戦者のリカルド・ロドリゲス(27=米国)を左フックで2度倒し、3回1分8秒KO勝ち。3戦連続KO勝ちで5度目の防衛に成功し、デビューから13連勝(11KO)とした。2回には左構えにスイッチしてストレートを利かせる“二刀流”も披露。9月の米国初進出が濃厚で、圧勝で夢の舞台へ弾みをつけた。

 有明コロシアムが2日連続でどよめいた。前日はミドル級世界王座に挑んだ村田諒太(帝拳)の不可解な判定負け。この日は井上の「左」だ。2回、本来の右構えから左にスイッチして左ストレートを2発入れると、ロドリゲスの足がガクリと止まった。3回にはカウンターの左フックを叩き込んでダウンを奪い、さらに左フックで倒す。挑戦者は立とうとしても立てなかった。

 「ちょっと気持ちの余裕があったので、やってみようかと。1回が終わって、相性的に試してみようと。いい左ストレートも入ったのでもっと精度を上げていきたい」。前日はあまり使う気がないと話していたが、今回の試合へ向けた練習では再三、左に変わってストレートや右アッパーを見せていた。以前から遊び感覚で試していたスイッチ。世界戦で武器にするまでに進化させ、大橋ジムの大橋秀行会長を「過去にこんな王者はいなかった」とうならせた。

 試合を決めた左フックは下半身強化の成果だ。今回は恒例のフィジカル強化合宿を、初めて試合1カ月前に実施。「軸がぶれない体」を目指して静岡・熱海で砂浜や階段を使って走り込み、戻った後も試合10日前までフィジカルトレを欠かさなかった。今年から通常のミット打ち以外に大型の「ドラムミット」を打つ練習も導入。パンチ力自体がアップしていた上に「下半身からの力の伝わり方が違う」(井上)と実感した合宿後のミット打ちでは、父・真吾トレーナーの右手首を“破壊”したほど。真吾トレーナーは破壊力を2階級上の「スーパーバンタム級」レベルと表現した。

 年内の対決を計画していた前WBC世界スーパーフライ級王者ローマン・ゴンサレス(ニカラグア、帝拳)が、3月にまさかのプロ初黒星。ドリームマッチ消滅で目標を見失いかけたが、米国で9月に試合を行うオファーが届き、新たなモチベーションとなった。この日はセミファイナルでジムの先輩、八重樫東が初回TKO負けで陥落。それでも集中力を切らさずに「勝って当たり前の相手」に圧勝した。パンチはほぼもらわず過去に何度も痛めた拳も無事だ。「9月にビッグマッチがあると聞いている。それへ向けて、いい倒し方ができた。もっと階級を上げて、バンタム、スーパーバンタムと視野を広げて頑張りたい」と新たな戦場へ視線を向けた。

 ◆井上 尚弥(いのうえ・なおや)1993年(平5)4月10日、神奈川県座間市生まれの24歳。新磯高(現・相模原青陵高)で高校7冠などアマ81戦75勝(48KO・RSC)6敗。12年10月プロデビュー。13年8月、国内最短タイとなる4戦目で日本ライトフライ級王座獲得。同年12月、東洋太平洋同級王座獲得。14年4月、WBC同級王者エルナンデス(メキシコ)に6回TKO勝ちして当時国内最短の6戦目で世界王者(防衛1)。同12月、WBOスーパーフライ級王者ナルバエス(アルゼンチン)に2回KO勝ちで当時世界最短の8戦目で2階級制覇。身長1メートル63.5、リーチ1メートル71の右ボクサーファイター。

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