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比嘉、日本初全戦KO新王者!名言再び“カンムリワシ2世”

[ 2017年5月21日 05:30 ]

WBC世界フライ級タイトルマッチ   ○同級1位・比嘉大吾 6回2分58秒TKO 前王者ファン・エルナンデス● ( 2017年5月20日    有明コロシアム )

6R、比嘉の猛攻にエルナンデスは崩れ落ちレフェリーが試合をストップ
Photo By スポニチ

 WBC世界フライ級タイトルマッチは同級1位の比嘉大吾(21=白井具志堅)が体重超過で王座剥奪となった前王者エルナンデス(30=メキシコ)に6回2分58秒、TKO勝ちを収めて新王者に輝いた。13戦連続KO勝ちで、全戦全KOでの世界戴冠は日本初となった。また、WBO世界ライトフライ級王者・田中恒成(畑中)は12回判定勝ち。WBCの同級4位の拳四朗(BMB)も判定勝ちし、ライトフライ級の世界王者は史上初めて主要4団体の王座を日本人が独占した。

 隣で憧れの人が泣いていた。それを見て比嘉は言うべきせりふを思い出した。どうして自分がボクシングを始めたのか、その理由もきっと。

 「わんやカンムリワシにないん!(自分はカンムリワシになりたい)」

 リングで叫んだのは具志堅会長が41年前に世界を獲った時と同じ言葉。沖縄出身選手らしく、300人を超える場内の応援団からは指笛が鳴り響き、新王者を祝福する気持ちいい風を吹かせた。

 「大丈夫。絶対につかまえます」。1Rを終えて比嘉はセコンドに伝えた。減量失敗で試合前にタイトル剥奪の憂き目に遭ったエルナンデスだが、1Rは左右をスイッチしながらの変幻自在のフットワークと鋭いアッパーを見せた。その速さに面食らいながらも追い足は緩めなかった。2R、5Rと左フックでダウンを奪い、6Rにはボディーを効かせて猛攻。このラウンドだけで4度、合計6度のダウンを奪うと、レフェリーが試合を止めた。

 野球少年だった中3の冬、テレビで見た具志堅会長のKO集に心を奪われた。「うわ、これだ」。高校ではインターハイベスト8止まりの選手だった。しかし素質を見抜いた具志堅会長に誘われてプロに進み、天性のパンチ力で道を切り開いた。「パンチは地面に砲丸を落としたように重い」と語る野木丈司トレーナーとの二人三脚のフィジカル強化で広背筋は巨大な翼に見えるほど成長。その破壊力はオールKOでの世界奪取という快挙を生み出した。

 試合の約10日前には、自宅で突然「パニック障害みたいのを起こした」という。脈拍が異常に上がり、呼吸が苦しく、めまいもあった。救急車を呼ぶことも考えたが、思いとどまった。「救急車を呼んで試合がつぶれるのが怖かったみたい」と野木トレーナーは明かした。

 八重山諸島には祝宴の席には欠かせない「バシントゥイブシ」という歌がある。そこに歌われているのが翼を広げて飛び立つカンムリワシの姿だ。具志堅会長に憧れて、カンムリワシになりたくて、歩み始めたボクシング人生。“カンムリワシ2世”はいま21歳。くしくも具志堅会長が世界の頂点に立ったのも同じ21歳の時だった。

 ◆比嘉 大吾(ひが・だいご)1995年(平7)8月9日、沖縄県浦添市生まれの21歳。中学までは野球で、三塁手、投手、外野手でプレー。宮古工入学と同時にボクシングを始め、国体フライ級ベスト8などアマ44戦36勝(8KO)8敗。白井具志堅ジムから14年6月プロデビュー。15年7月、敵地タイで7回KO勝ちしてWBCユース・フライ級王座獲得(防衛2)。16年7月、4回KO勝ちで東洋太平洋同級王座獲得(防衛1)。身長1メートル60・5、リーチ1メートル65・0の右ファイター。家族は父・等さん、兄・力斗さん。

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2017年5月21日のニュース