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ひげの村田が世界動かす!金メダリスト世界初ミドル級王者へ験担ぎ

[ 2017年5月20日 05:30 ]

WBAミドル級王者決定戦   同級1位 アッサン・エンダム≪12回戦≫同級2位 村田諒太 ( 2017年5月20日    有明コロシアム )

計量をパスした村田諒太(右)とアッサン・エンダムはベルトの前でにらみ合う
Photo By スポニチ

 ボクシングのトリプル世界戦(20日、有明コロシアム)の前日計量が19日に都内で行われ、WBAミドル級王座決定戦で世界初挑戦する村田諒太(31=帝拳)は72・3キロで一発パスした。勝てば日本人22年ぶり2人目のミドル級世界王者で、日本人五輪メダリストの世界王者と、五輪ミドル級金メダリストによるプロのミドル級世界王者はいずれも史上初という歴史的一戦。験担ぎのひげ面で、金メダルを獲得した12年ロンドン五輪以来の“頂点”を懸けたリングに上がる。

 プロボクサーのプライドがにじみ出た。五輪決勝前日と、世界戦前日の心境の違いを聞かれた時だ。「明日の朝になってみないと分からない。(五輪は)当日計量で、形が違うので」。そう答えた村田は「似たような緊張感とは思うけど、金メダルを獲ってからのキャリアの方が大きいと思う」と付け加えた。

 プロ13戦目でミドル級世界王者となれば主要4団体(WBA、WBC、IBF、WBO)での最速記録だが、12戦以上に中身の濃い4年間を送った自負があった。プロデビュー前、帝拳ジムの本田明彦会長は村田に告げた。「他の選手より3倍のスピードで成長しないといけないぞ」。欧米人の体格向きで日本人にとっては世界挑戦すら難しいミドル級。本来ならじっくり実力をつけるべきだが、日本で五輪メダリストの“賞味期限”は短い。年齢的にも猶予は許されない状況で、試行錯誤しながらわずか4年で大舞台を実現させた。

 ファイタースタイルでの戦い方に迷いはない。だからこそ、計量でも落ち着き払っていた。2人が顔を突き合わせる「フェースオフ」では15秒後にアッサン・エンダム(33=フランス)が目をそらしたが、すぐに自ら握手を求めた。一方で「(相手は)多少体を絞ったかなと。体は全体的に僕の方が大きかったと思う」と観察も怠らなかった。「僕は結構ビビリで、試合で開き直るタイプ。今からこんなに落ち着いていいんですかね?」との自問が成長の証だ。

 日本人の五輪メダリストは村田を含めて5人だが、世界王者はいない。ベルトは日本ボクシング界の悲願だ。世界を見てもフロイド・パターソン(米国=ヘビー級)やマイケル・スピンクス(同=ライトヘビー級、ヘビー級)ら階級を変更した選手を除き、五輪のミドル級金メダリストでプロでもミドル級の世界王者となった例は皆無。村田が勝てば、ボクシングが五輪種目に採用された1904年セントルイス大会以来113年の歴史を塗り替える快挙となる。

 計量後はすっぽんなどのスープ、夕食はうなぎを食べて栄養補給した。ひげは伸ばしたまま試合に臨むという。「最近、試合の時はこれで勝っているので。ちょっとでも(自分を)守ってくれる気がしませんか?験担ぎの類いです。おばあちゃんには“何で汚い顔で出るの”と言われるんですけど」。普段と同じように振る舞い快活に笑う姿に、重圧は感じられなかった。

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2017年5月20日のニュース