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村田、尚弥…画期的な2日連続世界戦ライブ中継 現状打破の期待

[ 2017年5月14日 11:30 ]

20日、世界タイトルに初挑戦する村田諒太
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 22年前の快挙は、テレビで生中継されなかった。1995年12月19日、ボクシングのWBA世界ミドル級タイトルマッチで竹原慎二(沖)がホルヘ・カストロ(アルゼンチン)からダウンを奪って3―0で判定勝ちし、日本人初のミドル級世界チャンピオンとなった一戦だ。

 従来の試合はTBSが放送してきたが、「大人の事情なんでしょうけど、途中で“できない”と言われて、結局、テレビ東京に深夜放送で拾ってもらった」と竹原氏。しかも、放送されたのは関東地区のみだった。事前の期待値が低かったことの現れで、日本人がミドル級のベルトを獲得した“奇跡”が余計にクローズアップされる結果になった。

 ロンドン五輪ミドル級金メダリストの村田諒太(帝拳)が、20日(土)に東京・有明コロシアムでアッサン・エンダム(フランス)とのWBA同級王座決定戦に挑む。事前の期待も高い世界初挑戦はトリプル世界戦のメインで、フジテレビが午後7時から生中継。翌21日(日)には同じ有明コロシアムでWBO世界スーパーフライ級王者・井上尚弥(大橋)らが出場するダブル世界戦があり、こちらもフジテレビが同時刻から生中継する。2つの興業は初日が帝拳、2日目が大橋とプロモーターは異なるが、1つの会場で2日連続の世界戦計5試合は、同局が「ボクシングフェス2017 SUPER 2DAYS」と銘打っての画期的な仕掛けだ。

 フジテレビ関係者によると、「2日連続は以前から考えていたこと。1日だけの開催では宣伝もしづらいが、バレーボールやフィギュアスケートの大会を週末に2、3日続けて放送するような形を、ボクシングでもつくりたかった」そうだ。ボクシングはどんなに強い世界王者でも年に3試合が限度で、他のプロスポーツに比べテレビでの露出時間が短いのが難点。1試合見逃すと、次戦までその選手の姿を何カ月も見ないことになる。それでも、まとめて試合を開催することで“今週末はボクシングがある”と世間に認知されれば、局側も宣伝などで動きやすくなり、選手の知名度も高まる可能性はある。

 注目されるのは、やはり「数字」だ。視聴率で苦戦していることもあるのか、関係者は目標の数値について言葉を濁す。一方、テレビの内情に詳しいボクシング関係者は「村田の試合が放送される午後8時台に、17〜18%を取りたい。7時台が10%としても、平均で15%はいける」と話す。先月にTBS系が放送した井岡一翔(井岡)の防衛戦の平均視聴率は、関東地区で12・9%、関西地区で15・6%と健闘して話題となっただけに、一つの目安となるだろう。また、同じ関係者は「村田の試合結果が良くて、一般の視聴者がボクシングに興味を持ってくれれば、翌日の井上尚弥の試合も見たいとなる」と“2日連続効果”にも言及した。

 複数世界戦、特に年末レベルの世界戦ラッシュになると、メイン以外の試合の選手がスポットを浴びにくい一面もある。今回も村田にばかり注目が集まり、他の選手が割を食っている感は否めない。それでもボクシング全体への注目度が増すのなら、当たる光の量そのものは多くなる。人気回復の起爆剤とまではいかないだろうが、22年ぶりの快挙への挑戦には、現状打破の期待も上積みしたくなる。(専門委員・中出 健太郎)

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2017年5月14日のニュース