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スーパースター誕生――WBA・IBF世界ヘビー級タイトルマッチ

クリチコを下し、拳を突き上げるジョシュア (AP)
Photo By AP

 【中出健太郎の血まみれ生活】プロボクシングの有料観客動員最多記録は13万2274人とされる。1993年2月20日、メキシコのエスタディオ・アステカで行われたWBC世界スーパーライト級タイトルマッチ、フリオ・セサール・チャベス(メキシコ)―グレグ・ホーゲン(米国)だ。エスタディオ・アステカはかつて「世界最大のサッカー場」と呼ばれ(改修のため現在は約10万5000人収容)、日本が銅メダルを獲得した68年メキシコシティー五輪や、マラドーナの「神の手」で有名な86年W杯のメイン会場として知られる。人気絶頂期の英雄チャベスなら、メキシコサッカーの聖地を満員にすることも可能だった。

 4月29日、英国サッカーの聖地、ロンドンのウェンブリー・スタジアムがボクシングで9万人の大観衆を集めた。アンソニー・ジョシュア(英国)―ウラジミール・クリチコ(ウクライナ)のWBA・IBF世界ヘビー級タイトルマッチで、結果はジョシュアの11回TKO勝ち。27歳のIBF王者がダウンの応酬の末に、かつてヘビー級の頂点に10年以上君臨した41歳の元3団体統一王者に13年ぶりのKO負けをつけた。リングサイドが2000ポンド(約29万円)、最も安い席が40ポンド(5800円)のチケット8万枚は発売開始から1時間で完売となり、1万席を追加発売。米国選手は出場していないにも関わらず、米ケーブルテレビ大手のショータイムが生中継、ライバルのHBOが録画放送するほどのビッグマッチとなった。

 村田諒太(帝拳)がミドル級を制した12年ロンドン五輪のスーパーヘビー級で金メダルに輝いたジョシュアは、プロ転向後まだ19戦(19KO)。ナイジェリアにルーツを持ち、18歳のときにサッカーからボクシングへ転向と競技歴は浅い。五輪では村田が「負けていたような試合で、相手のキューバ選手が抗議していたイメージがある」と言うように、地元判定にも恵まれた感があったが、最高の舞台で年間最高試合候補に挙がる名勝負を演じたことで、「今や世界のトップスターになった」(村田)ことは間違いない。

 粗さは目立つものの、ヘビー級トップ選手の中では正統派スタイル。試合が退屈でテレビ受けしないと米国での人気が低かったクリチコと違い、倒して勝つ強さは一般の人々にも分かりやすい。元WBC世界スーパーライト級王者で本紙評論家の浜田剛史氏が「説明しないと強さが分かりにくかった」と表現するフロイド・メイウェザー(米国、引退)に代わり、今後のボクシング界を引っ張る存在と期待は高い。

 ジョシュアが契約を結ぶ英マッチルーム・スポルト社のエディー・ハーン・プロモーターは、まだ37歳という若さ。ジョシュア以外にもトニー・ベリュー、ジェームズ・ディゲール、ケル・ブルック、リッキー・バーンズ、スコット・クイッグ、アンソニー・クローラ、ジェイミー・マクドネル、カリド・ヤファイと有力選手を多数抱え、史上空前のボクシング景気に沸く英国の中心人物だ。帝拳ジムの本田明彦会長は「日本も若いプロモーターが出てきてほしい」と希望する一方で、「今回の成功であと5年は続く」と“大英帝国時代”の長期化を予想。ジョシュアには今後、クリチコとの再戦、WBCヘビー級王者デオンテイ・ワイルダー(米国)との統一戦、15年にクリチコに勝っているタイソン・フューリー(英国)らとのビッグマッチの可能性がある。 (専門委員)

 ◆中出 健太郎(なかで・けんたろう) 2月に50代へ突入。スポニチ入社後はラグビー、サッカー、ボクシング、陸上などを担当。現地取材した03年ラグビーW杯で日本代表が全敗したのを受けてひげを伸ばし、15年W杯南アフリカ戦の勝利を記念にそった。本紙2面月曜日付「十字路」で使用されている記者の似顔絵はひげ面のままだが、変更した方がいいと指摘する人は社内に誰もいない。

[ 2017年5月4日 09:30 ]

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