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無敗の“業界動かす”高校生キックボクサー那須川 見てみたい武尊との対決

[ 2017年4月29日 11:30 ]

16日のRIZINで1回KO勝利し肩車される那須川天心
Photo By スポニチ

 スポーツは一人のスターの誕生で一気に活性化する。プロゴルフで言えば、宮里藍が東北高3年のアマチュアだった03年にツアーを制すると、それまで男子に比べて人気のなかった女子が注目を浴びるようになった。その後しばらく男子は低迷したが、石川遼が杉並学院高1年の07年にツアーを制すると、男子の人気は回復していった。卓球では福原愛が注目度を上げることに大きく貢献し、フィギュアスケートでは先ほど引退を発表した浅田真央さんの存在が大きかった。

 格闘技でも業界を大きく動かす可能性のある逸材が出てきた。現在18歳の現役高校生キックボクサー、那須川天心だ。主戦場としている「RISE」では、15歳のプロデビューから1年足らずでバンタム級(55キロ)の王座を獲得した。戦績は18戦全勝。空手で鍛えた蹴りに加え、類いまれなパンチのセンスを併せ持ち、プロボクシングのジムから獲得の誘いを受けたこともある。

 「キックボクシングを世の中に広めたい」という理由から、総合格闘技のイベント「RIZIN」にも参戦。16年12月29日の総合デビュー戦では経験に勝るテコンドー欧州王者に腕ひしぎ十字固めをきめられたが、絶体絶命の危機を脱してパウンドでKO勝利を収めた。右肘を痛めながら大みそかの大会出場を直訴し、中1日の試合で一本勝ち。今年4月17日のイタリア人ストライカー相手の一戦は、総合格闘技の練習を積んできたにもかかわらず、圧倒的なスピードで開始早々から左ハイキック、左ストレートを浴びせ、67秒で終わらせた。

 RIZINの高田延彦統括本部長はプロ野球の大谷翔平を引き合いに出し「MMA(総合格闘技)とキックの二刀流を目指してほしい」と期待を込める。RIZIN参戦で知名度が上がった那須川は「毎回、皆さんの期待以上のことをしていきたい」と意識が高い。4月の試合ではテレビアニメ「ドラゴンボール超」の孫悟空に似せた緑色のヘアにするなど、試合以外でもファンを喜ばせることを心がけている。「格闘技界は僕が引っ張っていく」という威勢のいい言葉も、この若武者ならやってのけてくれるという思いになる。

 RIZINだけでなく、キックボクシングのイベント「K―1」も新体制で再出発してから、着実にファンを獲得している。4月22日の大会では、エースであるフェザー級(57・5キロ)王者・武尊(たける)は金的にキックを受けながらも「あそこでストップしたらしらける」と試合を続行し、KO勝ちを収めた。「K―1こそ最高の舞台」と言い続ける男の活躍もあって、大会はこれまでの代々木第2体育館から、さいたまスーパーアリーナへと進出する。

 那須川と武尊。2人の実力者は団体の垣根に阻まれて対戦は実現していない。垣根を越えるには大きな障害があるのは百も承知だが、格闘技が盛り上がってきている今だからこそ、是非とも見てみたいカードだ。(佐藤 博之)

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