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WBA世界スーパーフェザー級スーパー王座を懸けたダイレクトリマッチが実現する件

[ 2016年10月17日 09:45 ]

現役続行会見を終え、鍛え抜かれた上半身を披露する内山
Photo By スポニチ

 【中出健太郎の血まみれ生活】プロボクシングの内山高志(ワタナベ)が再起を宣言した。4月27日、ジェスレル・コラレス(パナマ)に敗れてから5カ月半。7月には現役続行を決意していたそうだが、ジムが8月末に河野公平と田口良一のダブル世界戦、9月にも女子世界戦を控えていたため、渡辺均会長に伝えそびれたのだという。

 「年齢は特に考えなかった」「第二の人生を現実的に考えたことはなかった」と言う内山も、当初はさすがに落ち込んだと明かした。世界王座を守り続けた6年半の生活が終わり「練習しなくてもいいのは楽だな」「プレッシャーがないのは楽だな」と思ったこともあったという。だが、「負けちゃいけないというプレッシャーがボクシングの一番の醍醐味とも感じた」と切り替えられる思考に、11度の防衛を重ねた凄みが感じられる。

 再起にあたっては、自身に代わりWBA世界スーパーフェザー級スーパー王者となったコラレスと大みそかに対戦することで合意済み。近日中に正式発表予定だが、果たして内山は再戦でリベンジできるのだろうか?

 前回、2ラウンドKO負けした原因が研究不足にあったのは明らかだ。「コラレスの試合の映像は見たけど、積極的に出てくるパターンはなかった。見ていた映像と全く違う動きだった」。身体能力を生かしたディフェンスが武器のカウンターパンチャーという印象だったのが、試合開始ゴングと同時にスピードに乗って振り回してきた速攻を、スロースターターの内山はもてあましてしまった。しかも、1ラウンド途中で左から右へスイッチした相手への対応で後手を踏み、思わぬ劣勢に焦った2ラウンド、隙を見せたまま強引に打ちに出た結果、左カウンターを受けて致命的な最初のダウンを喫した。

 現役続行会見で、内山は「けっこうコテンパンにやられたので強気なことは言えないが、次やればいけるなという自信はある」と言い切った。未知だったコラレスのスピードや動きが分かっていることは、試合中の対応力や修正力に定評のある内山には有利。スピードある踏み込みや高い身体能力を出させないためにも、いかに相手との距離を詰めて戦えるかがポイントになるはずだ。本来なら慎重に試合を進めたいが、25歳のコラレスを勢いに乗せないため、試合時は37歳になる内山は序盤で流れをつかむ仕掛けも必要だろう。

 WBAのスーパーフェザー級には正規王者ソーサ(米国)がいるため、再戦で内山が勝てば単純にスーパー王者返り咲きとなるはず。しかし、正規のベルトそっちのけで、コラレスと内山の間でスーパー王座が行き来するというのも妙な話だ。暫定王者やスーパー王者を乱発して批判され、各階級で王座統一に乗り出したはずのWBAだが、一度はコラレスとソーサに統一戦指令を出したにもかかわらず、交渉が不調だとソーサに別のランカーと対戦指令を出すなど優柔不断ぶりは相変わらず。内山自身は「スーパー」が付いていようがいまいが関係ないだろうが、個人的にはいまだにこの対戦に釈然としない思いが強い。(専門委員)

 ◆中出 健太郎(なかで・けんたろう)1967年2月、千葉県生まれ。中・高は軟式テニス部。早大卒、90年入社。ラグビーはトータルで10年、他にサッカー、ボクシング、陸上、スキー、外電などを担当。16年に16年ぶりにボクシング担当に復帰。リングサイド最前列の記者席でボクサーの血しぶきを浴びる日々。

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2016年10月17日のニュース