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たまに総合格闘技を取材したら女子ボクシングについても考えさせられた件

[ 2016年10月3日 09:29 ]

RENA(右)に打撃で追い込まれる山本

 【中出健太郎の血まみれ生活】高田延彦がいる。ミルコがいる。テレビ放送席には小池栄子もいるぞ。選手入場は舞台も演出もライブのように派手だ。3日前のBリーグ開幕戦の演出に特に驚かなかったのは、PRIDE等で慣れていたせいか。

 9月25日、さいたまスーパーアリーナで開催された総合格闘技「RIZIN」を初めて取材した。記者はボクシング担当だが、守備範囲が広いスポーツ新聞では担当外の種目に首を突っ込むことも当たり前。門外漢なりに、印象に残った選手や場面を書き連ねてみる。

 (1)ギャビ・ガルシア ブラジルの女子柔術家。霊長類ヒト科女子最強の異名に異論はない。1メートル88、93キロ。いろいろとデカい。男性として、横に立つのはちょっと恥ずかしい。

 (2)山本アーセンの総合初勝利 才賀紀左衛門を豪快なスープレックスで何度も投げ飛ばし、会場を沸かせた。試合中に「俺たちが一番面白い試合をしてる」などと話しながら戦っていたそうだが、どの競技でも選手自身がプレーを楽しんでいると、見ている側もワクワクしてくる。あと、才賀の妻・あびる優の絶叫をマイクで拾う必要はあるのか?せっかく面白い試合なのに集中できない。

 (3)バルトVS藤田和之 勝ったバルトが藤田について「思ったより頭が硬い(物理的に)。当たっても効かない」と苦笑していた。バルトは右小指を骨折したほか、藤田のフックで目尻を切った。“野獣”藤田の引退表明が何とももったいない。

 (4)ミルコVSシウバ ミルコの試合前、旧知の関係者が「12月29日のトーナメント2回戦はミルコVSシウバを目玉カードとして組むはず」と断言していた。1回戦に勝ったミルコの“直訴”で10年ぶりの対決が実現したが、このカードに頼らないといけないほど若いスターがいないのか、というのが率直な感想。

 取材のお目当ては、元レスリング世界女王・山本美憂の総合デビュー戦だった。結果はシュートボクシングの女王・RENAの一本勝ち。最も興味を引かれたのは、試合後のリング上でRENAが「PRIDE時代に女子の試合が組まれることはありえなかったのに、3試合も組んでもらって感謝しています」とコメントしたことだ。

 ボクシングやプロレスにも言えるが、女子格闘技には“イロモノ”扱いされてきた歴史がある。男子に比べて迫力不足は否めず、あるボクシングジムの会長も「男子と女子の試合は別物。興行は分けて開きたい」と話すほどだ。個人的にも、女子ボクシングはガチの殴り合いより、アマチュアのようにポイントを競う試合形式の方がいいのではと考えていた。

 だが、女子レスリングが五輪でメダルを量産しているおかげで女子格闘技も“市民権”を徐々に獲得し、ガチが求められる時代になっているのだろう。選手層の薄さからガチの試合にはまだ限りがあるが、山本美憂VSRENAがRIZINのセミファイナル(テレビ放送はメインの扱い)を務めたのも、結構画期的な出来事じゃないのかと考えている。(専門委員)

 ◆中出 健太郎(なかで・けんたろう)1967年2月、千葉県生まれ。中・高は軟式テニス部。早大卒、90年入社。ラグビーはトータルで10年、他にサッカー、ボクシング、陸上、スキー、外電などを担当。16年に16年ぶりにボクシング担当に復帰。リングサイド最前列の記者席でボクサーの血しぶきを浴びる日々。

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2016年10月3日のニュース