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前王者・三浦、復活へ…最高の“ボンバーレフト”がさく裂する日

[ 2016年4月27日 09:30 ]

5月7日に再起戦に臨む三浦(右)

 これほど復活が期待されているボクサーもいないだろう。5月7日、後楽園ホールのリングに上がる前WBC世界スーパーフェザー級王者・三浦隆司(31=帝拳)だ。昨年11月21日、米ラスベガスでフランシスコ・バルガス(メキシコ)に9回逆転TKO負けし、ベルトを失って以来の再起戦を、2階級上のフィリピンのスーパーライト級ランカー相手に行う。

 バルガス戦は当日のラスベガスのメインイベント、WBC世界ミドル級タイトルマッチのミゲル・コット―サウル“カネロ”アルバレス戦もかすむほど劇的なダウンの応酬となった。リング誌、スポーツイラストレーテッド誌、スポーツ専門局ESPNから全米ボクシング記者協会まで、米メディアはそろって「年間最高試合」に選出したが、敗れた三浦は当然ながら複雑な思いを抱えている。「あれでボクシング人生が終わるのなら最高試合に選ばれたことを誇りに思う。でも、現役ボクサーに求められるのは勝つこと。やっぱり勝ちたかった」。

 帰国後、自身が行く先々で試合の映像が流された。「チラッとは見るけど、本当はあまり見たくない」と振り返った一戦は最高どころか納得に程遠い出来だったという。「棒立ちになって左の一発狙い。一番悪いぐらいだった」。足は動かず、冷静にジャブを打てというセコンドからの指示も耳には届いていたが、体が動かなかった。「ただ勝てばいいという場所じゃない、見せる試合をしないといけない、と感じていた」。13年に敵地メキシコで防衛に成功した経験を持つ三浦ですらラスベガスの呪縛(じゅばく)からは逃れられず、皮肉にも観客と関係者が魅せられたファイトと、残酷な結果を生んだ。

 世界王座復帰を目指すにあたり、故郷・秋田で暮らしていた妻子を東京へ呼び寄せた。練習ではディフェンスと体の動き方をもう一度見直した。敗れて思い出したこともある。「バルガスは接近戦でコツコツと打ってきた。それにパンチ力があったので、ダメージとなって蓄積してしまった。自分もそういう練習はしてきたはずなのに、防衛を重ねているうちにチャンピオンのプライドというか、そういうのを打たなくなっていて、逆に相手にやられた。後悔しました」。スパーリングでも細かく打つことを意識しており、再起戦は初心に帰って課題を確認しながらKOで健在をアピールする場となる。

 現王者バルガスは6月4日にオルランド・サリド(メキシコ)との初防衛戦を控える。バルガスが防衛に成功すれば、関係者の期待を集める「再戦」が実現しそうだが、評価を高めた三浦もWBC1位にランクされており、世界再挑戦の機会は早めに訪れるはず。ファンもメディアも三浦自身も「最高」と思えるような“ボンバーレフト”がさく裂する日が待ち遠しい。(記者コラム・中出 健太郎)

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