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“打たせずに打つ”理想を体現する井上尚弥の可能性

[ 2014年9月5日 23:33 ]

6回、サマートレック(右)に左ボディーを見舞う井上

WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ12回戦 王者・井上尚弥 TKO11回1分8秒 サマートレック・ゴーキャットジム

(9月5日 東京・代々木第2体育館)
 プロボクシングのダブル世界戦が5日、東京・代々木第2体育館で行われ、WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ12回戦は王者・井上尚弥(21=大橋)が挑戦者で同級13位のサマートレック・ゴーキャットジム(29=タイ)を11回1分8秒にTKOで下し、初防衛に成功した。井上の通算戦績は7戦7勝6KO。

 特筆すべきは井上の試合後の顔だ。ほとんど傷がない。相手のパンチをほとんどもらってない証。そんな中、4回に右フック、6回に左ボディーで2度のダウンを奪い、11回には一方的な連打でレフェリーストップを呼び込んだ。

 まだ弱冠21歳ながらスキのない戦いぶり。これまで“打って打たれて”の激闘型が多かった日本人選手にあって、“打てせずに打つ”技術で魅せるボクサーだ。

 原点はトレーナーでもある父・真吾氏の存在だ。井上にボクシングを教え始めた際、「息子が打たれる姿を見るのはイヤ」と足を使ったDFを徹底的に身に着けさせたという。相手のリーチが届かない距離にいれば、打たれることはない。地味だがこれを12回フルに行うには相当な修練が必要だ。井上の場合、パンチのコンビネーションや踏み込みのスピードにスタイリッシュで洗練されたものを感じるが、原点にはロードワークを源とする走力に、父が基本に忠実に教え込んだバックステップがある。

 蝶のように舞い、蜂のように刺す。往年の名ボクサー、ムハマド・アリの戦いぶりはそう称えられた。根性むき出しで打ち合うのもボクシングだが、スポーツを感じさせるスマートさが井上の最大の持ち味だ。

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