×

袴田事件、証言誘導か 女性「本当は見覚えなかった」 

[ 2014年2月23日 15:52 ]

 1966年6月に静岡県清水市(現静岡市清水区)で起きた一家4人殺害事件で、死刑判決が確定した袴田巌死刑囚(77)=第2次再審請求中=の凶器購入先とされた刃物店で働き、公判で「袴田死刑囚の顔に見覚えがある」と証言した女性(87)が「本当は見覚えがなかった。思っていることと違うことを証言した」と話していることが23日、共同通信の取材で分かった。

 また、女性の長男高橋国明さん(64)は、女性が67年7月の静岡地裁での公判に検察側証人として出廷し、帰宅した際に「証言の仕方を教えてくれるんだね」と話していたことも新たに明らかにした。袴田死刑囚弁護団の村崎修弁護士は「公判前に捜査機関が証言を誘導した可能性がある」としている。

 昨年12月に提出した弁護団の最終意見書には盛り込まれていないが、村崎弁護士は「凶器とされた小刀では事件を実行できないとする弁護団の主張を裏付けている。捜査機関が証拠を捏造(ねつぞう)したことを示す重要な証言として裁判所に訴えていきたい」としている。

 女性は事件当時、同県沼津市にあった刃物店の店主の妻。現在は病気療養中だが意思疎通は十分でき、高橋さんと一緒に取材に応じた。

 一審や控訴審では「捜査員から見せられた顔写真の中に見覚えのある顔があった。事件の2~3カ月前に見たような気がする」などと証言していた。

 しかし高橋さんによると、女性は店を訪れた捜査員に数十枚の顔写真を見せられたが、見覚えのある顔はなかった。別の日に捜査員が「犯人がこの店で刃物を買ったと話している」と言い、犯人が書いたものとして手書きの地図を見せた。女性は地理関係が正しかったので「だったら店に来たのだと思う」と答えたという。

 女性は92年ごろ、凶器とされた小刀が原形をとどめていたことを知って判決に疑問を持つようになった。高橋さんは「母は自分の証言で有罪になったのではないかと苦しんでいる。この声が裁判所に届いてほしい」と話している。

続きを表示

2014年2月23日のニュース