山中 強すぎV5!「神の左」さらに進化、4連続KO
WBC世界バンタム級タイトルマッチ ○山中慎介 KO9回25秒 アルベルト・ゲバラ●
(11月10日 東京・両国国技館)
WBC世界バンタム級王者の山中慎介(31)は同級8位のアルベルト・ゲバラ(23)に9回25秒KO勝利し、5度目の防衛に成功した。パワーアップした左の「コークスクリューパンチ」で圧倒。4連続KO防衛は西岡利晃らに並ぶ日本人世界王者の歴代3位。来年以降の団体王座統一戦、1階級上げての2階級制覇へ向けて、大きな弾みをつけた。
勝負を決めたのはまたしても左だった。フックでもアッパーでもなく、ストレート。「最後は思い切り踏み込んで、伸びて当たった」。9回、左の強打でロープにはじき飛ばし、ひるんだ相手に襲いかかった王者は、得意の一撃で挑戦者をマットに沈めた。
「イライラさせて申し訳ないです」。序盤は思いのほか苦戦した。足を使って動き続けるゲバラをなかなか捉えることができなかった。「予想以上に当てさせてくれなかった」。ジャッジ3人が7回まで69―64をつける圧倒的な内容だったが、フラストレーションがたまった。それでも我慢強く圧力をかけ続けた。「徐々に距離が近づいてきたのが分かった」。相手の運動量が落ちた8回に左で2度のダウンを奪った。流れをつかんで一気に畳み掛けた。
前戦からわずか3カ月の試合で、防衛戦では4戦連続、世界戦では6戦中5度目のKO勝利だ。全ては左ストレートで決着している。後援会関係者に「神の左」と命名された山中の強打は、手の甲が内側を向くまで拳をひねって打ち込むのが特徴だ。漫画「あしたのジョー」で矢吹丈のライバルで世界王者のホセ・メンドーサが必殺技としていた「コークスクリューパンチ」と同じだ。「漫画は意識していない」と言うが、人さし指と中指の付け根の関節部分を相手に突き刺すイメージで、神の領域に磨き上げた。
今回は防衛戦では初めての右構えとの対戦だった。左構えの選手で邪魔になっていた相手の右ガードがないため「余計に深く打ち込める。威力が増す」。今回は減量前に1キロ増量してパワーアップも図った。進化したコークスクリューパンチが最後は勝負を決めた。
リング上では「バンタムで最強だと思っている」と胸を張った。悩みは対戦相手がいないことだ。国内には同じバンタム級にWBA・亀田興毅、WBO・亀田和毅の2人の王者がいるが、統一戦実現のハードルは高い。世界を見渡しても元IBF王者のサンタクルス(メキシコ)ら一流選手は階級を上げてしまってバンタム級にはいない。「統一戦でもいいし、1つ上の階級の王者でもいい。強い相手とやりたい」。今は誰にも負けない自信がある。これが王者の本音だ。
▽山中―ゲバラVTR 山中は序盤、慎重な試合運びだった。パンチをもらう場面もあったがジャブで追い詰め、徐々にペースを握った。8回に2度ダウンを奪って防戦一方にさせ、9回に左ストレートがきれいに顔をとらえ、KO勝ち。ゲバラは積極性に欠けた。大振りが目立ち、効果的な攻撃ができなかった。
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