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井上 最速タイ日本奪取も「辰吉さんの方が何十倍も上です」

[ 2013年8月26日 06:00 ]

10回、井上(右)の右フックが田口の顔面にヒットする

プロボクシング 日本ライトフライ級タイトルマッチ10回戦 井上尚弥 判定 王者・田口良一

(8月25日 神奈川・座間市民体育館)
 “怪物”井上尚弥が10回判定の3―0で勝利し、辰吉丈一郎(元WBC世界バンタム級王者)と並ぶ史上最速タイ記録のデビュー4戦目で、日本タイトルを獲得した。王者の田口良一に対し、左右の連打で試合を優位に運びながらもKOできずに判定勝ち。試合後は反省の弁を口にした。次戦は年内に行う予定だが、世界戦でなく世界ランカーとの対戦が有力視される。

 試合直後の井上に笑顔はなかった。ベルトを手にして左手を掲げられても表情は硬いまま。「うれしいですが、まだまだ未熟者。田口選手の意地が凄くて自分のボクシングではなかった。記録は並んだが辰吉さんの方が何十倍も上です」。3―0の判定勝ちも、1人のジャッジはわずか3ポイント差。反省の弁が自然と口を突いて出たのも無理はなかった。

 2回に左フックで王者をぐらつかせ、接近戦では上下に打ち分けた。だが「芯で当たっていない。途中からボディーで倒せればと思ったけど、それも当たらなかった」とパンチの精度に課題を残した。最終回は大橋秀行会長の「倒しにいかなくてもいい」という言葉にも耳を貸さず、なりふりかまわず攻めた。しぶとい王者を仕留められず「闘い方より気持ちが駄目だった」と反省した。

 それでも進化も見えた。前戦で右拳を痛め、2カ月間は下半身強化に努めて茅ケ崎の砂浜で走り込んだ。拳を痛めないために命中率を上げることを意識。八重樫ら世界王者クラスと約100ラウンドのスパーリングもこなし、接近戦も強化してきた。24日に42歳の誕生日を迎えたトレーナーの父・真吾さんは「ベルトを獲ったのはうれしい」と言いながらも「尚弥は気持ちにムラがあって集中力を欠いていた。世界はこんな甘いもんじゃない」と気持ちを引き締めた。

 これで世界ランク入りは確実だが、次戦について大橋会長は「世界戦はない。年内にもう1試合して課題が生かせたら」と世界ランカーと対戦させたい意向を示した。井上も「もっと芯に当てるパンチの命中率を上げていかないと。まだまだ」。来年にも井岡一翔(井岡)が持つ、7戦目で世界王者という日本記録を狙う。

 ◆井上 尚弥(いのうえ・なおや)1993年(平5)4月10日、神奈川県座間市生まれの20歳。元アマチュア選手でジム経営者の父・真吾さんの影響で小1からボクシングを始める。相模原青陵高1年時にインターハイ、国体、選抜を制覇。2年で国体、3年ではインターハイ、全日本選手権、インドネシア大統領杯を制して、7冠獲得。アマ通算75勝(48KO・RSC)6敗。12年10月プロデビュー。4戦4勝(3KO)無敗。1メートル63、右ボクサーファイター。家族は両親と姉、弟。

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