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八重樫2階級制覇 井岡と再戦?佐藤洋太へ挑戦も

[ 2013年4月9日 06:00 ]

9R、左で相手を圧倒する八重樫

WBC世界フライ級タイトルマッチ12回戦 ○同級6位 八重樫東 判定 同級王者 五十嵐俊幸●

(4月8日 東京・両国国技館)
 WBC世界フライ級タイトルマッチは、壮絶な流血戦の末、同級6位で、元WBA世界ミニマム級王者の八重樫東(あきら)が王者の五十嵐俊幸を3―0判定で下し、飛び級での2階級制覇を達成した。同スーパーフェザー級タイトルマッチでは、同級10位の三浦隆司が王者ガマリエル・ディアスに9回TKO勝ちして初戴冠。同バンタム級タイトルマッチでは王者山中慎介が12回TKOで3度目の防衛に成功した。日本選手の世界王者は日本のジムに所属していないIBF世界ミニマム級王者高山勝成(フリー)を含めると史上最多10人となった。

 認定書の授与式で、リング上の八重樫は大橋秀行会長に聞いた。「夢じゃないですよね」。頬をつねられると、いつものように腫らした目からうれし涙がこみ上げてきた。アマ時代4度負け、アテネ五輪の代表選考スパーリングではダウンを喫して五輪の道を断たれた男に10年越しのリベンジ。「彼にも意地があったと思うけれど、僕の方が気持ちが強かった。その差だと思います」

 1回から五十嵐の懐に飛び込んだ。身長で6・5センチ、リーチで9センチ下回る1メートル60の体をさらに低くして突進。ボディーにワンツー。接近戦を嫌がる相手に左フックで攻めたてペースをつかんだ。5回には五十嵐が右目上を切り、6回には自らも右目上を切った。相手が接近戦に応じ、激しい流血戦。それでも足を止めずに前に出続けた。11回にはこん身の右フックで王者の膝を崩した。最後まで一歩も引かず、ジャッジは9、7、5ポイント差をつける完勝だった。

 大橋会長は「作戦通りです」と胸を張った。サウスポーを苦手とする八重樫はアマ選手にもスパーリングでボコボコにされた。悩む愛弟子に、大橋会長が渡したのは1メートル61と小柄ながら、WBCライトフライ級で15回防衛した張正九(韓国)がサウスポーと戦うビデオ。「下から入って戦っていた」。もともと打ち合いを得意とするタイプ。「くっつかないと勝てない」と迷いが消えた。

 落ち込んだ時には長男の圭太郎くん(7)に救われた。「父ちゃん、勝てると思うか?」と聞くと「勝つと思えば勝つ」と即答。「生意気なこと言うなと思ったけれど、心に響いた」。2階級上の肉体に改造するため通った1日3時間、週4回の過酷な筋力トレーニングにも妥協しなかった。

 今後、井岡がフライ級に上げてくれば、再戦の可能性は十分ある。一度は流れたWBCスーパーフライ級王者・佐藤洋太への挑戦もある。「30歳ですけれど、可能性を感じるようになった」。宿敵へのリベンジを果たし、夢が大きく膨らんできた。

 ◆八重樫 東(やえがし・あきら)1983年(昭58)2月25日、岩手県北上市生まれの30歳。黒沢尻工でボクシングを始め、3年時に総体優勝。拓大時代には国体優勝。05年3月プロデビュー。06年4月に日本人最速タイの5戦目で東洋太平洋ミニマム級王座獲得。11年10月WBA世界ミニマム級王座獲得。12年6月、井岡一翔とのWBA・WBC王座統一戦で判定負け。右ボクサーファイター。1メートル60。家族は彩夫人(29)、長男、長女・志のぶちゃん(2)。

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2013年4月9日のニュース