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三浦「おやじやったよ!」急死父が後押しした初ベルト

[ 2013年4月9日 06:00 ]

TKOで勝利し葛西トレーナーに肩車されガッツポーズする三浦

WBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチ12回戦 ○同級10位 三浦隆司 9回TKO 同級王者 ガマリエル・ディアス●

(4月8日 東京・両国国技館)
 母・久子さん(55)が持つ父・政司さん(享年58)の遺影に、三浦は「おやじ、やったよ!」とリング上で呼び掛けた。「おやじが後押ししてくれたんだなと感じます」。1月10日、交通事故が原因で急死した父の空気を確かに感じていた。

 試合前、自ら「ボンバーレフト」と名付けた左ストレートが唯一にして最大の武器。だが、王者に対策がないはずはない。右ボディーから顔面に右カウンターを合わせられた。初回に三浦の左が当たる気配はなかった。

 だが、当たった。左ボディーから右フック、左ストレート。2回のコンビネーションから流れが変わった。3、6、7回とダウンを奪った。9回、左を当てると王者は硬直したようにキャンバスに沈んだ。11年1月、WBA王者・内山高志(ワタナベ)に「手も足も出ず」8回終了TKO負け。左頼みを改造するため自ら世界王者が多くいる帝拳に移籍したのは間違いではなかった。

 1月8日に事故に遭った父の状態は当初右太腿骨折と聞いていたが、腹部にもダメージがあったため容体が急変。死の瞬間は、連絡を受け慌てて故郷の秋田県山本郡の病院に向かう途中だった。変わり果てた父と対面したとき「絶対に王者になる」と誓った。しかし、三浦がこの日、亡き父の顔を思い浮かべたのは「勝ったあと」。父を支えに、父を頼って孤独なリングで戦ったわけではなかった。

 「間近で父に見せることができなくて残念」と話したが、遺影の横には、妻・彩美さん(27)の腕に抱かれた1歳8カ月の長男・武元(たけはる)くんがいた。「父になって、父を亡くした」。三浦は、墓前にささげるベルトを手に「今なら内山君に勝てる」と話した。父の力だけで勝ったのではない自信があふれた。

 ◆三浦 隆司(みうら・たかし)1984年(昭59)5月14日、秋田県山本郡生まれの28歳。中3でボクシングを始め、金足農時代に国体ライト級優勝。03年7月プロデビュー。09年7月日本スーパーフェザー級王座獲得。11年に横浜光ジムから帝拳ジムへ移籍。日本フェザー級王座を2度獲得した三政直は叔父。1メートル69・5。左ファイター。家族は夫人と長男。

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2013年4月9日のニュース