井岡 40戦無敗沈めた!国内最速の世界獲り
WBC世界ミニマム級タイトルマッチ12回戦は11日、神戸ワールド記念ホールで行われ、同級10位の井岡一翔(21=井岡)が、王者オーレドン・シッサマーチャイ(25=タイ)を5回TKOで下し、国内最速のプロ7戦目で世界王座を獲得した。初の平成生まれの世界王者となった井岡は、叔父の井岡弘樹会長(42)が初代王者という縁があるベルトを奪取。プロ41戦目で初黒星を喫したシッサマーチャイは、7度目の防衛に失敗した。
ニュートラルコーナーで拳を突き上げた瞬間、涙があふれた。5回1分7秒、井岡が左ボディーをオーレドンのみぞおちに食い込ませると、40戦無敗の王者がまさにもん絶した。レフェリーはカウント途中で両手を広げる。TKO。国内最速の7戦目で、平成生まれの21歳が頂点に到達した。
「勝てば記録はついてくると思った。不安もあったけど、うれしい」。叔父の井岡会長が初代王者として巻いた緑のベルトが、おいの腰に巻かれる。「叔父さんが王座を奪われたのと同じタイの選手から取り戻せてよかった」。第13代王者の笑顔がほころんだ。
チャンスは2回に訪れた。左構えのオーレドンの左ストレートを浴びながら、前に出た。足を止めた打ち合いで左フックを受けながら左フックを返した。腰が落ちたのは王者。ペースを握り、得意のアウトボクシングが生きた。前に出た王者のボディーに突き刺した見事なワンパンチだった。
世界2階級制覇の叔父と元ボクサーの父。物心つく前からグローブで遊んだ。だが、厳しさを知る父・一法さん(46)はためらった。「教える自信はあったけど…」。中学でやっとボクシングを教えてもらった。
「血」はすぐに開花する。大阪・興国高2、3年で選抜、インターハイ、国体を制し、史上3人目の高校6冠を達成。北京五輪を目指して東農大に進学した。07年、五輪代表の最初の関門である全日本選手権。決勝で1ポイント差で敗れ、北京への道は絶たれた。
「あの敗戦は今でも引きずっている。悔しさを忘れたくない」。東農大を2年で中退し、プロに転向した。しかも、国内最短の7戦目での世界奪取を目指した。だが、昨年は内容のない判定勝ちや初のダウンを経験。今年正月のおみくじは凶だった。「去年は大凶だったから」。さらに、主戦場のライトフライ級の1階級下での世界戦。決して流れはよくなかった。
「7戦目と8戦目では全然、違う。記録を更新できてよかった」。アマの105戦が、プロでたった6戦のキャリアに何を上積みをしてくれるというのか。時期尚早の声に結果で答えを出した。試合数ではない。井岡には「忘れたくはない悔しさ」という立派なキャリアがあった。
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