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判定圧勝!亀田興毅「母にささげる」2階級制覇

[ 2009年11月30日 06:00 ]

10回、内藤大助(右)の顔面に左フックを決める亀田興毅

 興毅が涙の2階級制覇を果たした。ボクシングのWBC世界フライ級タイトルマッチ12回戦が29日、さいたまスーパーアリーナで行われ、挑戦者の同級3位・亀田興毅(23=亀田)が、王者・内藤大助(35=宮田)を3―0判定で下した。プロ22戦目で初の日本人との対戦を制した興毅は、07年10月に内藤に判定で敗れた次男・大毅(20=亀田)の敵を討つとともに、WBAライトフライ級に続き、日本のジム所属選手で史上7人目の2階級制覇を達成。内藤は6度目の防衛に失敗した。

 採点を聞くと、興毅は涙ながらにリング中央で突っ伏した。因縁の対決は判定で3―0の快勝だった。2階級制覇のベルトを掲げ、第一声は「オヤジ、どんなもんじゃい!」。リングサイドで目に涙をためた父・史郎氏(44)に叫ぶと「1本目はオヤジにあげた。2本目はオレを生んでくれたお母さんにささげたい」と話した。父と離婚した母。12回を経て、内藤との因縁は家族への思いに変わっていた。

 序盤から足を使い、出てくる内藤にカウンターを当てた。「持ち味を生かした。向こうは振り回してくるから打ち終わりを狙った」。右フック、左ストレート、左アッパーを的確に当てた。特にノーモーションの左ストレートは有効で、2回に顔面に決めて鼻血を出させた。内藤の鼻をコアラのように腫れ上がらせたが、受けたパンチはほとんどない。巨大なアリーナから降り注ぐ王者への大声援をむなしくさせるほど、内藤の変則ボクシングを空振りさせた。

 07年10月、反則騒動で話題を呼んだ弟・大毅(20)の敵討ちと注目された。初防衛戦の相手として内藤に挑んだ大毅は、最終12回にすくい投げなどをし、大きな批判を浴びた。ライセンスの1年間停止処分を受け、史郎氏もセコンドライセンスの無期限停止。自身も厳重戒告処分を受けた。

 「あれですべてが狂った」。亀田家のダーティーイメージは極まり、3兄弟の世界奪取ロードも修正を余儀なくされた。「試合1カ月前まで大毅の敵をとらないかん、いろいろ言ってる人間を見返さないかん」と考えていた。だが、試合直前には「勝ちたい、その気持ちでいっぱい」になり、内藤や世間への憎しみや反発は消えた。

 逆に、複雑な思いがあった。実は、幼稚園のころは内藤と同様にいじめに遭っていた。4歳から泣きながら空手を習ったのは、そのためだった。内藤とかぶる過去は、内藤を憎むことをためらわせた。「試合前はいろいろ言ったけど、素直にありがとうと言いたい」。因縁は自ら水に流した。

 弟の無念、亀田家のダーティーなイメージ、自らを追い込むビッグマウス。多くのものを背負った亀田家の長男は「どんんだけ勝ちたいか、それだけやね」と最後に話した。因縁も悪評も、勝利への一念でろ過し、家族への思いとともに勝利を手にした。2年に及んだ内藤と亀田家の因縁は、試合前に決着がついていたのかもしれない。

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2009年11月30日のニュース