球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

選手も球界管理職も黒人の拡大なし

[ 2016年6月12日 05:30 ]

 9日に始まった米国のドラフト。大リーグ機構(MLB)はアフリカ系米国人(黒人)選手が何人指名されるかに注視していた。昨年のドラフトでは、1巡目指名36人で黒人選手は9人(25%)。92年以来最多だ。そして、今年、1巡目指名34人で黒人選手は5人(15%)にすぎなかった。

 今季開幕登録選手868人のうち、黒人選手はわずか68人(7・8%)。86年の19%を頂点に黒人選手は減り続け、近年は8%の壁が生まれた。MLBが無策だったわけではない。91年に民間の黒人の子供たちへの野球普及活動の運営を引き継ぎ、活動を続けている。参加する子供たちは、今では200万人に達する。昨年のドラフト1巡目の指名実績で「今年はさらに増加も」と、MLBは期待したが、現実は厳しかった。MLBで若者向け野球育成担当のトニー・リーギンス理事は「簡単に結果が出るプロジェクトではない。まず、黒人選手減少に歯止めをかける。それから80年代後半から90年代前半の黒人大リーガーの数を目指す。そして人種の多様性を維持するため少年野球支援の続行だ」。

 昨年、元エンゼルスGMのリーギンス氏をMLBに迎えたのはロブ・マンフレッド・コミッショナーだった。黒人のリーギンス氏が、フロントの選手育成部門一筋でトップになった手腕とキャリアを買ったのだが、問題は選手だけにとどまらない。30球団で黒人監督は2人。球団社長も2人で、GMはたった1人。球界の管理職にアフリカ系米国人の数が少ないことへの批判は高まっている。国際化による中南米選手の大量流入、教育や所得格差によって機会均等が失われた。「大リーグは国の問題を映す鏡」、妙案もなく嘆くコラムが目に付くばかりだ。 (野次馬)

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