球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

渋すぎる契約は新労使協約への駆け引き

[ 2016年3月6日 05:30 ]

 パイレーツの3年連続プレーオフ進出に貢献した25歳の若きエース、ゲリット・コールが浮かない顔でキャンプを続けている。昨季は19勝8敗、防御率2・60。サイ・ヤング賞投票では4位にランクされた。ところがオフの契約更改で提示された金額は53万8000ドル(約6133万円)。昨季は年俸53万1000ドル(約6053万円)に球宴選出ボーナス1万ドルが付き、計54万1000ドル(約6167万円)を手にした。

 「なぜ減俸?」とコール。ニール・ハンティントンGMは「球宴ボーナスは年俸ではない。だから7000ドルアップだ」。コールは昨季終了時点で大リーグ登録が2年111日。年俸調停権を得る3年に61日不足した。選手に交渉権はなく、球団は最低保証額50万7500ドル(約5786万円)以上を払えばいいのである。

 当然、コールの代理人スコット・ボラス氏はGMに猛抗議した。GMはあらためて「54万1000ドル」を示し、「年俸の計算過程でミスがあったので調整した。ただし、我が球団は長年ボーナスを年俸とみなしていない。したがって昨季より1万ドルアップ」。サインしたものの、“現状維持”ではコールの浮かない顔は当然だった。

 2年前、エンゼルスが登録2年の外野手マイク・トラウトを年俸100万ドル(約1億1400万円)にして球界を驚かせ、その1カ月後、6年1億4450万ドル(約164億7300万円)の契約に切り替えると、多くの球団は言葉を失った。新人は3年間年俸交渉権なしで抑え込み、次のFA権を得るまでの3年間は年俸調停委で戦う…という球団側の年俸抑制の枠組みが崩れたためだ。パ軍の“渋い契約”は進行中の新労使協約交渉で選手有利になりかねない流れのブレーキとの見立てがある。当たっているようだ。 (野次馬)

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