球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

事故に遭った観客のための「調停」という提案

[ 2016年1月3日 05:30 ]

 今季から全球場で施設の一部が、防護ネットを設置している日本の球場に似たものになるかもしれない。ただし、大リーグ機構(MLB)の「ファンの安全な観戦に向け推奨する防護ネット設置ガイドライン」に各球団が従えば、の話だが。昨年末、オーナーたちはMLBが「ネット設置ガイドライン」を出すことに了承した。ところが、ガイドラインへの球団の足並みがそろわない。

 「バックネットの幅を少し広げる」、「危険と思うファンには座席の変更に応じる」、「入場券に書いてある注意喚起を目立つようにする」などの“緩い対策”ばかり。ファウルボールや折れたバットの破片が飛び込むことが最も多いベンチ裏の1等席のファンがネットを嫌うこともあるが、「観客の自己責任」という昔からの“習慣法”に球団が逃げ込んでいる気配もある。ニューヨーク・タイムズ紙によると、負傷や生涯続く後遺症を負ったファンが補償裁判に持ち込んでも、判決まで何年もかかる上、まず勝てない。長く続いた球団免責の判例があり、球団の落ち度の証明が難しい。面倒で弁護士が引き受けてくれないのだ。

 タイムズ紙はこんな提案をした。選手の年俸調停制度の援用だ。被害者のファンは治療費、慰謝料、後遺症がある場合の補償など、全ての金額をまとめて調停委員会に申し出る。球団もそれに対応する金額を提出する。そして委員の前で定められた時間でプレゼンを行う。委員会は双方の金額を足して2で割ることはせず、一方の金額で裁定する。こうすれば被害者も法外な金額は出せず、球団も安易な金額は出せない。

 この種の事故は日本式に防護ネットを張り巡らせても起こる。調停は考慮すべきアイデアと思うのだが…。 (野次馬)

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