球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

義務化へ圧力強まる防護ネット設置と傘使用規定

[ 2015年11月29日 05:30 ]

 大リーグ機構(MLB)は、全30球団のホーム球場でファウルボールや折れたバットから観客を守るネット設置の「推進令」を出すという。6月、観戦中の主婦にバットの破片が当たり一時は生命が危ぶまれた。「防護ネットを」の声にMLBが素早く動かなかったのは「迫力あるプレーを目前で」と売る球団の商策を守り、負傷者が出ても「観客の自己責任」の入場券裏の記載で球団が責任回避する「習慣法」が崩れるのを恐れたためだ。

 1年に1500件以上の負傷事故が起こっている現状を報じるメディアの中で、ニューヨーク・タイムズの記事に松井秀喜さんが登場した。アスレチックス移籍後の雨中のヤンキースタジアムでの試合。松井さんのファウルボールが不動産業の男性の左顔面に当たった。左眼窩(か)周囲の骨は砕かれ、今も後遺症が残る重症だった。治療費は総額10万ドル(約1230万円)。事故は11年8月、手術後に男性はヤ軍に自分で払った治療費の一部、2万5000ドル(約308万円)の支払いを求めたが、球団は応じない。12年に訴訟を起こし、係争は今も続くが、タイムズ紙は男性が「降雨でも試合中は傘を差さないようにすべき」と提案するのに注目した。開いた傘に囲まれ「グラウンドは全く見えなかった」というのだ。

 タイムズ紙によると、試合中断の時以外は傘の使用を禁止している球団が8球団、2球団は球場内での傘の使用を一切禁止だ。ヤ軍も法廷闘争とは別に、12年から大きな傘の持ち込みと試合中の傘の使用禁止を決めたが、球場の観客安全対策が球団間でバラバラな状態に変わりない。ネット設置と傘使用規定ぐらいは義務化するようにと、MLBへの圧力が強まっている。 (野次馬)

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