球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

球場の安全対策 動きが遅すぎて…

[ 2015年7月26日 05:30 ]

 大リーグの緊急課題は内野席のファンをファウルボールや折れたバットの破片から守る対策だ。6月、レッドソックスのフェンウェイ・パークで主婦にバットの破片が当たり、一時は命が危ぶまれる負傷をした。8日後に退院し、ホッとしたところに、またも主婦がファウルボールで眉間を30針縫うケガ。全球場の安全対策が問われる事態になった。

 選手協会のトニー・クラーク専務理事は「選手はファンの安全を最大の課題と捉えている」と声明を出した。ところが、ロブ・マンフレッド・コミッショナーは「大リーグ機構(MLB)が慌てて対策を取るのは誤りと思う。来季までにMLBで最低限の対策基準を示し、各球団はそれをもとに独自に対策を進めるだろう」と首をかしげるコメント。球場改修にはお金がかかる、強い縛りは掛けないから自由にやれ、とでも言うのか。

 MLBのスローな動きは各球団が警戒したファンの訴訟を招いた。アスレチックスのシーズン席を持つ女性が「MLBはファンの安全を無視している。バックネットから右翼、左翼のポール際までネットを張るべきだ」と北カリフォルニア連邦地裁に訴えた。訴状では、打球やバット破片の飛ぶスピードにファンは対応しきれない。MLBの試合時間短縮策のプレー・ペースアップでさらに危険は増した。加えてボールからファンの視線と集中力を奪う電飾PRも問題にされるようだ。

 プロアイスホッケー(NHL)では02年に観客の13歳の少女にパックが当たり死亡事故が起こった。以後、全競技場に防護ネットを設置した。昨季大リーグ30球場で負傷したファンは1750人。「娯楽性と安全性のバランスを取る難しさがある」とはお気楽すぎる気がする。 (野次馬)

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