球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

無観客試合で“文化的公共財”の役割を果たしたオ軍

[ 2015年5月3日 05:30 ]

 大リーグ野球が始まって139年目で初めて観客なしの試合が行われた。4月29日(日本時間30日)のオリオールズ―ホワイトソックス戦だ。黒人青年が警察に拘束され負傷し亡くなり、抗議集団が暴徒化し、ボルティモア市は夜間外出禁止を含む非常事態宣言を出した。オ軍は4月最終週のレイズ戦をタンパに移したりオフ日に組み込んだりしたが、はみ出した1試合を無観客のデーゲームで消化したのだ。試合はオ軍が8―2で勝利。これが「野球は習慣のゲーム」の伝統を守ってなかなかのものだった。

 試合開始前の国歌斉唱は録音だ。先発投手とブルペンに向かう捕手のカレブ・ジョゼフはベンチ脇のフェンス前で立ち止まり仮想のファンにサインするそぶりをしてからハイ・ファイブまでやり、帽子を取り無人のスタンドに向けて振った。3アウト目のボールはスタンドに投げ込まれた。7回表が終わると「私を野球に連れてって」とジョン・デンバーの「すばらしきカントリーボーイ」の録音が流れた。ただ試合に関係ないマスコットのムクドリ(オリオール)の着ぐるみのダンスはお休み。7回裏終了、記者席に「公式記録記載のため、有料入場者は(一呼吸置いて)ゼロ」とアナウンスされた…。

 ネットのニュース画像にはネット裏席に2人の男性が写る。これはオ軍のスカウトで投手の記録をつけるのが業務、観客ではなかった。武装した州兵や警官隊が固める市内に穏やかな空気を生んだのがオ軍の無観客試合とボルティモア交響楽団の街頭演奏だったとメディアは報じた。球団は“文化的公共財”とも言うが、オ軍は楽団とともにその役割を果たした。 (野次馬)

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