球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

アルコール依存症の処分めぐりエンゼルスに深い溝

[ 2015年4月12日 05:30 ]

 選手の球団への信頼が揺らげば、チームの一体感は失われる。「エンゼルスはその危機にある」と野球メディアが叩いている。ジョン・カルピーノ球団社長とジェリー・ディポトGMが主力選手を非難する声明を出したためだ。アルコールとコカイン依存症の再発で大リーグ機構(MLB)の調査を受けたエ軍のジョシュ・ハミルトン外野手に調停人は「罰は科さない」と裁決した。これにエ軍首脳の不満が爆発した。「出場停止にすべき。彼は球団、チームメート、ファン、自分の家族をも裏切った」と猛反発した。球団が主力選手の出場停止を望んだのだ。

 ハミルトンの依存症は球界もファンも周知の事実。以前所属したレンジャーズではプレーオフ進出の祝杯をシャンパンではなくジンジャーエールで挙げた。依存症に苦しむハミルトンをチーム全体で支えたのだ。ハミルトンには依存症再発の場合は機構に自己申告が義務付けられていた。筋肉増強剤の使用と違って、依存症では罰するより治療に重きを置くのが労使間の合意。裁定はその流れだ。

 5年契約のハミルトンには3年8300万ドル(約99億6000万円)が残る。期待外れの2年が過ぎ、今季は肩の手術で故障者リストに入ったまま。出場停止ならエ軍は年俸を払わずに済む。コストカットの思惑が外れ、アート・モレノ・オーナーは「依存症再発でもチームに置く保証は契約書にない」と言う。ハミルトンの自己申請は一部メディアにリークされていた。「エ軍が処分期待で守秘義務を破りリークしたのでは」と疑う選手会はオーナー発言に激怒した。メディアも、エ軍を支持するMLBに「新コミッショナーは依存症も厳罰対象とするのか」と問う。エ軍の長期契約失敗は労使対立にまで広がった。(野次馬)

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