球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

過度な時間制限ルール導入は球趣をそぎかねない

[ 2014年10月26日 05:30 ]

 ワールドシリーズの熱狂から離れてアリゾナ州では6球団の有望若手が集結する秋季リーグで、来季の大リーグのテスト試合が続けられている。大リーグ機構(MLB)の試合ペース検討委員会による時間制限ルール案でプレーする試合だ。

 ネット上の写真を見ると、球場フェンスの5カ所にバスケットボールの試合で残り試合時間を刻む電光時計が設置されている。たとえば投手交代は2分30秒以内に完了とされたので交代のコールが出ると時計は2分30秒にセットされ29秒、28秒とカウントダウンしていく。初戦を伝えるニューヨーク・タイムズ紙によると、投手はブルペンから駆け足でマウンドに向かい、8球から6球に減らされたウオームアップで打者と対決する。打者は間を取りたくても片足は打席内に残さないと「ストライク」をコールされる。投手の投球間隔は20秒以内。オーバーすると自動的に「ボール」。投球なしで打者を歩かせる敬遠場面はなかったが、選手たちは時計を気にして「急げ、急げ」でせわしなかったそうだ。

 時計相手に戦ったような1対0の試合時間は2時間14分。今季の平均試合時間は3時間4分。子供たちを球場に呼び戻し、将来のファンをつくるため試合時間短縮を最重要課題とするMLBには「いける」の“成果”だが、このまま本番で「ゴー」でいいのかどうか。野球はたくさんあるグレーゾーンを時にミスする審判員の判断に任せてさまざまなドラマを生んできた。今季のビデオ判定を待つ野球がどれほど試合から人間味と熱気を奪ったことか。アウトで計る野球時間を時計時間に変えて縛る野球、さらに球趣をそぐことにならないか気にかかる。 (野次馬)

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