球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

MLBが先手を打った家庭内暴力対策

[ 2014年9月21日 05:30 ]

 大リーグ機構(MLB)と選手会は、家庭内暴力に対応する新規則の制定に向け、協議を開始した。現行の「労使協約」の改定交渉は16年だから異例の動き。MLBが選手会と手を携え家庭内暴力対策に乗り出したのは、NFLの大混乱を見ての先手の防衛策だった。

 レイブンズのスター選手、レイ・ライスが当時婚約者だったジャネイ夫人への暴力行為で逮捕された。NFLは2試合の出場停止を科したが、暴行現場の監視ビデオがネット上に流れた。ホテルのエレベーター内でライスが婚約者の顔面にフックを浴びせてノックアウト。気を失った婚約者を引きずり出すショッキングな映像だ。

 ビデオ映像は警察が証拠として入手し、NFLにも渡していた。「NFLと球団の示し合わせのインチキ処分。コミッショナーは辞任せよ」とファン、メディアばかりか、選手からも猛反発が起こった。球団はライスを解雇。NFLは「ビデオを見たのは処分後だった」と弁解して無期限出場停止に処分変更したが、騒動は収まるどころか選手の家庭内暴力の暴露報道が続出した。騒ぎは他のプロスポーツにも及ぼうとしている。

 AP通信の調査では、主要プロスポーツで家庭内暴力に特定した対応規則を定めているところはない。「大リーグは球場内だけでなく場外でも社会に対する責任を自覚している。法律に先行してこの種の規則を定める協議を始めたのはそのためだ。罰則と併せて防止の相談システムも考える」とバド・セリグ・コミッショナー。実は来年1月に引退することもあり、当初は腰が重かった。NFLの公式スポンサーが契約破棄を迫る事態に素早く反応したのだが、経営センスはさすがだった。 (野次馬)

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