球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

54歳若すぎる死“グウィンの悲劇”を教訓に

[ 2014年6月29日 05:30 ]

 殿堂入りの「安打製造機」トニー・グウィン氏が54歳で亡くなって1週間、ささやかな余波が生まれた。グウィン氏はパドレスから引退後、母校サンディエゴ州立大野球部の監督を続けていた。教え子のナショナルズのエース、スティーブン・ストラスバーグ投手が「かみ(噛み)たばこをやめる」と宣言したのだ。大学時代のチームメート、ダイヤモンドバックスのアディソン・リード投手もこれに同調した。

 グウィン氏の死因は唾液腺がん、長年愛用したかみたばこが疑われる。大リーグでは、1990年代までは数種類のブランドのかみたばこが入った箱をベンチに置いていた。たばこの葉を丸めて口に入れ、頬を膨らませているのが大リーガーだった。カウボーイや農林業に携わる野外労働者が手を使わず火の心配もないかみたばこを愛用してきたが、大リーグも昔からその“仲間”だった。

 しかし、「スモークレス(無煙)たばこ」であっても、口の中のがん発症の危険性に変わりはない。大リーグ機構(MLB)は、キャンプで講習会を開き、手術で容貌が変わってしまったOB選手の講話をして、かみたばこによる健康被害の啓もう活動を続けてきた。

 球団もベンチ、クラブハウス内のかみたばこ支給をやめているが、個人的に持ち込む選手は多い。「グウィンの唯一の欠点がかみたばこをやめられなかったこと」と野球記者が指摘したように悪習と知りながらやめられないのが現実だった。

 MLBは「不法薬物と違い合法的な生産物を大人の選手に禁止できない」という。「ステロイドで死者はいないが、かみたばこの犠牲者はいる」との声が上がる。“グウィンの悲劇の教訓”からのストラスバーグらの動き、広がるだろうか。 (野次馬)

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