球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

健康体を改造「不要なトミー・ジョン手術」に懸念

[ 2014年3月23日 05:30 ]

 悪いことは重なる。先週、ブレーブス・メドレン、アスレチックス・パーカーら主戦級投手5人がトミー・ジョン手術(肘じん帯の移植手術)を受けると、AP通信が伝えた。今月6日に88歳で亡くなったフランク・ジョーブ博士が1974年に開発した、傷めた肘に利き腕とは反対の正常なじん帯を移植する手術は、トミー・ジョンが術後164勝(通算288勝)して46歳まで投げたことで球界に定着した。APの記事をフォローしたニューヨーク・タイムズ紙は、「大リーグ投手の3分の1近い投手がこの手術を受けている」と報じた。

 自身2度の同手術の経験を持つレッドソックスのジョン・ファレル監督は「私のように元に戻らず引退した投手もいる。投球数が管理されているのに肘を傷める投手が増えているのが心配」という。手術の効果が認められ、手術後は以前より腕が強くなる、と考える高校生投手も出現した。ニューヨーク・タイムズ紙に載った大学教授の投書だが、その生徒は肘を故障したわけでもないのに両親に「クリスマスの贈り物としてトミー・ジョン手術を受けさせてほしい」と頼んだという。健康体を改造して大リーグを目指す。これでは「不要なトミー・ジョン手術時代になる」と教授は懸念していた。

 この悪化する状況の中、手術後のトミー・ジョンの練習に肘故障回避の秘密がある、という見方がベテラン記者から出された。ジョンは毎日欠かさず「スローイング=軽く投げる」を続けた。「ピッチング=力を入れて投げる」は数を気にするあまり、スローイングまで禁止し、日々肘をメンテナンスする地味な練習が不足しているのでは、との疑問。考えどころだ。 (野次馬)

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